「spin」04号には、山本善行が聞き手となった「湯川成一」さんへのインタビュー
が掲載されています。もとは「sumus」4号にのったものでありまして、これは
ネットでも公開されておりまして、たいへん参考になったものです。
湯川書房が限定本とした著者には辻邦生、小川国夫、塚本邦雄、杉本秀太郎さん
など湯川成一さんが心酔した文学者がいますが、そのなかで一般には知名度が
高くなくて、湯川書房から数冊だしている人に美術史家の加藤一雄さんがおら
れます。
このインタビューにおける「加藤一雄」さんについてのくだりは、以下のように
なります。
「 湯川 ただ『無名の南画家」に革を使おうなんて絶対に思わない。
いくらいい革があっても、そういう中身の本が続いたということもあるん
です。
山本 やっぱり中身と関係があるということですね。
湯川 加藤一雄さんを初めて読んだときは興奮したねえ。
山本 僕もびっくりしまいした。だから戸田勝久さんにいわせたら、もう宗教
みたいなもんやと。僕もやっと入信できたというところで、他に読んで
いる人がいたら嬉しいです。広めたいとおもったり。加藤一雄教みたいに
なっている。
湯川 『蘆刈』が旭屋の店頭に並んでたのを覚えてますよ。」
加藤一雄さんの小説が、最近、このように有名になっているのは、山本善行さんが
布教活動をしているからであるようです。
この「spin」には戸田勝久さんが、加藤一雄教について書いています。
「 ある時、湯川さんに本の仕事をさせてくださいとお願いをしたが、にやにや笑って
おられるだけで終わってしまった。私も厚かましいことをいったものだ。・・
随分時がたってから加藤一雄『無名の南画家』という私の大好きな小説を読んで
もらおうと薄い古書を渡したところ、とても気に入って下さり、さあ出そうという
ことに成った。1997年やっと私の湯川書房での仕事が実現した。幸せな仕事
だった。・・・熱心な加藤一雄教の信者となった湯川さんと私は、結局残りの二冊も
すでにでていた古書をかき集めて、作り替え本ということで私が装画させてもらった。
・・湯川さんの掌上で大好きな加藤一雄の書物すべてに関わりをもてたのは生涯
忘れがたい幸福なことだった。」
小生は、いまだに入信はしておりませんが、日本の古本屋で確認をしたら、比較的
安価で「無名の南画家」の古書がみつかり入手することができました。(もちろん
湯川のものではない。)
その後、検索をかけると在庫が確認できませんので、着々と布教活動は進んでいて
信者があつこちに増えているのかもしれません。