「銀花」21号から 2

 「銀花」21号 75年3月刊には「道楽散歩」というページがあります。この号で
散歩するのは、「名古屋の古本屋」さんです。名古屋というのは、数回いったことが
あると思いますが、古本屋歩きはしたことがありません。どのような店があるのか
まったくわかっておりません。
 この文章の書き出しは、以下のとおりです。
「 名古屋市内にある古書店を数えると三十六軒ある。いずれの店も立派な店構えを
 持ちながら、どちらかといえば地味でめだだないたたずまいでる。何事にも堅実で
 極端をきらう土地柄を反映してのことだが、神田をしっている人にとっては、もう
 すこしセールスポイントが表にでてきれもよさそうだと思われるかもしれない。」

 この36軒のうち、十一店をまわったとあって、その報告が以下につながります。
「 栄から103系の市バスに乗り、城見通2丁目で下車すると、バス停の筋向かいに、
 『城見書店』がある。表に週刊誌をならべているだけで、うっかりすると見過ごして
 しまうほど店構えは小さいが、限定本に力をいれる古書店として全国的に知られて
 おり、塚本邦雄の信仰的ファンがわざわざ新幹線で訪れてくるというほど。
 奥のガラスケースには三クニトリオ小川国夫、塚本邦雄辻邦生のものがとりそろ 
 えられており、・・・・
  店主の伊藤力氏は芹沢けいすけ『赤絵紋様集』吾八刊五部本を掘り出した人だけに、
 最近の粗製濫造ぎみの限定本に対しての評価は実に厳しく、逆にそれは、愛書家が
 一家言を持たにところにもその原因があるという。自分が手にしてみてよくないもの
 はお客にすすめない主義で、1972年湯川書房がだした加賀乙彦『雨の庭』は
 理想の限定本であると絶賛する。・・・
  おびただしい文学書の中に、塚本邦雄句集『断言のための七〇句』、湯川書房
 叢書「火の雉子」「水の梔子」が美本で一括して納まっている。こういうものを
 手に出来る魅力があるので、交通の便は悪くともわざわざでかけてくる人が多いの
 だろう。」

 この紹介から33年たって、この古書店はどうなっているのだろうとネットで店名を
いれて検索をしてみましたら、いまだに店は健在で営業を続けているようでした。
特にネット販売に力をいれているというわけではなく、やっているようですが、いまは
どのようなものを中心に品揃えをしているのでしょう。