限定本の蒐集家

 本を集めるといっても、その対象が限定本となると懐具合もですが、やはり執着心の
ようなものも相当でなくてはいけないようです。昨日に「仙台が親戚」様に記していた
だいた高橋啓介さんについての逸話を読ませていただいても、とっても小生にはまねが
できそうにありません。
 「蒐集家というものはと、高橋さんを例に挙げ、希望の本が下関に有り、所蔵家に断ら
 れても、『うん』と言われる迄ホテルに宿泊、日参されたという話をされています。
 温厚な風貌の中に、蒐集家の執念を秘められていたのだ、日本一のコレクションの評価も
 当然、湯川書房か出た6冊の本は高橋さん生涯を掛けた蒐集の花だと思います。」

 高橋さんは、このように蒐集したものを題材にして著作をものにしていますので、まだ
理解してもらえるかもしれませんが、純粋に集めるだけで発表もなにもしない純粋蒐集家と
なると、利殖の対象として考えていたくらいのことをいわなくては、かっこうがつかない
ようにも思えます。まあ病膏肓にはいった蒐集家が世間体のことを気にするとも思え
ないのでありますが。
 別冊太陽「本の美」には、愛書狂として「清澄堂文庫主人」のことが紹介されています。
(筆者は坂本一敏さん)
「 限定本が軌道に乗ってきた昭和10年頃から、この世界にのめり込んでいき、限定本の
 黄金時代には二番本の紳士として、押しも押されもせぬその筋のオーソリティになって
 いた。彼は限定本刊行の版元にたいして二番本の頒布を懇望し、各版元から二番本の
 配布を受けていた。新しく限定本が刊行されると、必ず版元を訊ね、出来たばかりの本を
 うやうやしく受け取り、持参の風呂敷に大切に包んで高鳴る胸に抱きながら帰路についた。
  帰宅すると風呂敷を大切に机上に置き、手を清めてから包みを開き、本を手に取り、
 静かに愛撫して頁を繰った。」

 二番本を中心に蒐集するというところがすごいことでありまして、この方の蔵書の運命は
如何?