創業40周年 6

 内容見本の資料価値については、古くは谷沢永一著『署名のある紙礫』(もちろん、
後年には「紙つぶて」となって文庫化されたもの)にも取り上げられていますが、
まったくそのとおりであります。全集とか高額商品の販売目的でありますので、編集部
としては、これに力がはいらないわけがない。その昔はずいぶんと豪華なものがあった
のですが、最近は事情にうとくなっていて、ほとんど入手につとめることもなくなって
います。個人全集が多く企画された時代にはずいぶんと魅力的なものがありました。
(ここ十年くらいで秀逸であったのは、小学館からでた武満徹の音楽CDを販売する内容
見本でした。これは版元に直接お願いをして送ってもらったものです。
良い編集者は、良い内容見本を作ります。)
 話を「本の雑誌」2012年10月号掲載の高橋良平さん「国書刊行会 魅惑の内容見本」
に戻しましょう。高橋さんを虜にしたのは、「世界幻想文学大系」であります。
 高橋さんの文章からの引用です。
「この”体系”にふさわしい内容見本をうっとり眺め、刊行を心待ちにしていた(高定
価にもうろたえたが、国書の本に、それをいったらおしまいだ。)
 この一発で、国書刊行会の内容見本の虜になったわけだが、マメに請求するヘキも
ないから、つづく『ドラキュラ叢書』『ラテンアメリカ文学叢書』も、凝った内容見本
を作っただろうが、残念ながら未入手。』
 どうやら高橋良平さんと、当方は同年生まれのようでありますが、当方のほうが学年
は上と思われます。75年には「就職留年」をして、ラジオ番組制作の臨時雇員をしてい
たといいますから、こうした生活で基準定価二千円の本を買い続けるというのは容易な
ことではありません。
 高橋さんが「うっとりと眺めた」内容見本の別の面を、以下にかかげてみます。

 とにかく拡げるとB2判と大きなものとなりますので、当方の持っているスキャナーで
は、全体を写しだすことができなくて、なんだろうこれはでありますが、「赤と緑の刷り
色が禍々しくも幻想的、スミ(?)の文字組みは斜めに走り」という雰囲気が伝わりまし
たら、よろしであります。