湯川共和国10

 湯川回顧展にあわせるように湯川書房についての、あれこれを綴っています。
 他の方のブログを拝見しますと、展示についてのきちんとした写真があったりして、
当方もすこしちゃんと写真をとっておくべきであったと、今頃になってくやんで
おります。
 湯川書房の本を入手するとすれば、どのようなものがいいのかと、刊行目録を
見ながら、「日本の古本屋」検索を行っています。版画等がはいった限定本は高額で
ありますので、これは無理であるなとか、やはり湯川書房にとっても特別の一冊で
ある辻邦生「北の岬」であるかと、検索をして夢をみておりました。
 これが昨日までは「湯川書房、北の岬」といれれば、けっこうな数がリストに
あがって、なかにはちょっと無理すれば買うことができるかなというものがあった
のでありますが、さきほどに検索をしましたら、これが二冊しかリストにあがって
きません。それのどちらも三万円台をつけていて、これは簡単には手が出ない値段で
あります。
 当方が昨日に見たと思っているリストというのは、一日くらいで、このように劇的に
変化するものでしょうか。それが不思議であります。当方が見たと思っているものが、
見間違いであったのでしょうか。それとも、これからの値上がりを予測したどこかの
誰かが、買い占めをしたか、値段の付け替えでもしたのでしょうか。
 どちらにしても、「北の岬」との縁はないことです。
 湯川書房の限定本を確保するために奔走する話し、装幀家 間村俊一さんが
「アイディア」誌08年11月号に発表しています。
湯川成一さんがこの七月十一日、京都で亡くなられた。・・少部数限定の素晴らしい
本を刊行されてこられた湯川書房の主である。かってこの版元から”車谷長吉句集”が
出ていると知り、年来の車谷ファンである私はあわてて注文したが時すでに遅し、
”刊行と同時に完売、品切れとなっております。”という丁重なお葉書を頂戴したことが
あった。なにしろ限定百部、葉書裏の刊行案内によれば、”本文二色刷、表紙は紬着地と
ロッコ皮による継表紙の極上句集”とある。全册著者の署名と一句、落款、頒価は
三万円である。もちろん高いなどとは言っていられない。車谷さんと懇意にして
もらっているという編集者にまで頼みこんで問い合わせてもらったものの、ご本人の
手許にも一冊しかないとのことであった。
 諦めきれずに神保町をうろつくこと数ヶ月、ようやくK書店の棚に発見、入手する
ことが出来たもののなんと四万五千円、ファンとはこのくらい見さかいのないもので
ある。」
 そういえば、これまでの湯川書房の刊行目録には、販売された当時の価格がのって
おりませんでした。間村さんが購入した「車谷長吉句集」は2000年の刊行で、三万円で
ありましたが、入手したのはいつであったのでしょう。
 69年にでた「北の岬」の最安値が、数日前までは1万円ほどでありました。最初に
でたときは三千円ですから、やっぱり購入するのでありましたか。
だけど、本当に1万円弱であったのか、自分が見たと思っていることが信じることが
できないことです。