湯川書房は限定本で有名になったのでありますが、小生が手にすることができた
のは、一般書を刊行するようになってからです。一般書といっても、普通の本よりは
こだわっているものでありまして、78年12月に刊行された宇佐見英治さんによる
「辻まことの思い出」の奥付には、宇佐見さんの雅印が検印用としておされていました。
最近は、めったに検印をしているものはないのでありますが、印を押したり、はったり
というのは、手間がかかりますので、ほとんどの出版社は、これを省略しているので
した。
「 辻まことの死後、私が折々書きつづった追悼や思い出の文章を湯川書房から
本にしたいといわれたとき、私は茫々とした時の深さを思い、書物になるなら
それもまたよいと心にいいきかせた。」 宇佐見英治のあとがきから
この「辻まことの思い出」の奥付には、次のようにあります。
著者 宇佐見英治 刊行 湯川成一 印刷 精興社 製本 三水社
装幀 加川邦章
発行所 大阪市北区西天満四丁目拾番拾弐号 株式会社 湯川書房
印刷を東京 精興社にだして、それが大阪に戻ってから製本されて本と
なるのでありますから手間とコストはかかるのであります。わずか80頁の本であり
ますが、この本の価格は1200円でした。
湯川書房の刊行になるもので、小生が購入した限定本というと「溶ける魚」シリーズの
なかにある「1954・5年詩集」飯島耕一さんのものです。小生は古本で購入した
ものですが、これは刊行部数こそ限定でありましたが、豪華本ではありません。
これのあとがきには、飯島耕一の文章がありますが、これでは湯川書房への言及が
ありません。この本の奥付を紹介することといたしましょう。
「 飯島耕一作『1954・5年詩集』は叢書溶ける魚の第5回刊行本である。
限定三百部を刊行する。
本書はその251番
著者 飯島耕一
編集 鶴岡善久・ 政田岑生
刊行 湯川成一
印刷 鈴木美術印刷
製本 片岡紙工
昭和51年9月10日発行 」
この本は、署名本でありますが、その上、さらに献呈されているのでした。
小生は、この本を、現在の古本相場のほぼ半額で入手したのですが、現在の日本の
古本屋には、小生が購入したよりもさらに半値以下で、この本がでておりまして、
これは湯川書房の本の雰囲気を味わうにはにふれるには絶好のおすすめ本であると
思って記した次第です。