湯川書房のこと2

 湯川書房は、目録も作成されていないということで、ここの版元の活動を
まとめて、後世に残そうとしますと、相当に苦労をしそうです。
出版を始めたときは、どこもいつまで続くかがわかりませんので、その日
くらしのようなことになるのですが、仮に出版が安定期を迎えるとしたら
その時に、はじめて記録をまとめる気分になるのでしょうか。
 湯川書房のことをとりあげた雑誌の特集で、初期のものというと、「季刊
銀花」14号 73年6月のものがあります。いまも「季刊 銀花」という
のは刊行が続いてますが、最近はあまり手にすることもなくなっています。
文化出版局からでていて、編集人は今井田勲さんでして、この人はこだわりの
雑誌人でありました。
 まずは、この号のあとがきから、紹介をいたしましょう。
「 限定本を作っている湯川書房主、成一さんは、かって証券会社の会社員
だった。会社に勤めるかたわら本を作っていたのだが、毎日、そろばんより
本のことで頭が一杯で、ついに証券会社を辞める。自分のやりたいことには、
人生を賭けてつっこんで行く人に、なぜか親しを感じる。
 まだ、三十代の青年で、ここの出版は将来が楽しみだ。」
 
 この14号には「湯川の限定本」という小特集がありまして、湯川の刊行物の
書影が4頁あり、そのあとに塚本邦雄「稀書陸離たん」4頁、そして湯川成一
さんの「わたしの本作り」という文章が3頁となります。
湯川成一さんは、ほとんど自分の出版のことについてはかたっていないので、
この「銀花14号の特集は、極めて珍しいものとなっています。