朝に起きてから仕事にいくまでの時間に、数分間、個室にすわって本を
手にすることがあるのですが、ここのところページを開いているのは、
サマーセット・モームの「サミング・アップ」です。
すでに1年半も前に購入した物ですが、日々すくないときは1ページも
読むことができないのですが、それでもこれを2年もつづければ、読みあがる
ことでしょう。
この本は、以前は「要約すると」というタイトルでしたが、これからのは
この文庫本のタイトルで定着するのでしょう。
- 作者: モーム,W.Somerset Maugham,行方昭夫
- 出版社/メーカー: 岩波書店
- 発売日: 2007/02/16
- メディア: 文庫
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以前は、新潮社から全集がでていたのですから、いまよりもずっと読まれて
いたように思います。小生が高校生くらいのときには、新潮文庫に何作か
はいっていたはずです。その文庫で「人間の絆」を読んだはずです。中身を
覚えているどころでなく、読んだ事実ですらあいまいになっているのです。
これは自伝的な色の濃い作品ですが、最近は読む人はいないのかな。
こちらが年をとったせいか、それともほかにも理由があるのか、「サミング
・アップ」を読むと、なるほどなとおもうところが随所にあります。
いくらもページは進んでいないのですが。
「私は皮肉屋だと言われてきた。人間を実際よりも悪者に描いていると
非難されてきた。そんなことをしたつもりはない。わたしのしてきたのは、
ただ多くの作家が目を閉ざしているような人間の性質のいくつかを、際だたせた
だけのことである。人間を観察して私がもっとも感銘を受けたのは、首尾一貫性の
欠如していることである。首尾一貫している人など私は一度も見たことがない。
・・・同一人物の中に両立できぬように思える諸性質がどうして共存しうるのか、
何度も思案をしてみた。
自己犠牲を厭わぬ悪漢とか、温和な気だてのコソ泥とか、もらった金に相当
する報いを客に与えるのを名誉にかけた信条にしている娼婦とか、そういう
例を私は知っている。」
自己犠牲を厭わぬ悪漢と温和な気だてのコソ泥というところにすっかり
感服するのでありました。