ポプラ文庫「古本道場」

 ポプラ文庫は、今年になって創刊されたものでしょうが、小生が手に
したのは、6月新刊ででた「古本道場」がはじめてでありました。
 ポプラ文庫は、いかにも若い女性をターゲットにした文庫のようで
ありまして、ラインナップには女性の書き手による作品が多くならんで
います。6月の新刊案内には好評既刊ということで、あさのあつこ
江國香織小手鞠るい松井今朝子という女性の書き手ばっかしであり
ますので、こうした作家の読者が男性が多いとは考えにくいことです。
 となると「古本道場」も女性むけということになりますね。師匠役で
岡崎武志さんはでてきますが、著者の名前では角田光代さんが上にくる
のでありました。これには、口絵写真がはいっているのですが、女性の
古本屋さんの姿などもみることができて、地方にくらす小生には新鮮な
風景でありました。
 小生を喜ばしたのは、次のところであります。「学生街の喫茶店」という
曲の歌詞を引用に続いてです。

「 いい曲だとは思うが、ただ不満なのはこの学生街に『古本屋』がでて
 こないことだ。こいつはいけません。学生街、とくれば喫茶店、定食屋、
 そして古本屋でしょう。
  わたしは京都で学生生活を送ったから、京都の古本屋は方々回った。
 回り尽くしたといっていい。しかし古本屋街と呼べるほどのものは
 京都にはなく、唯一京都大学そばの百万遍交差点周辺と、そこから
 今出川通り沿いに10軒ほどあった。ほかは市中に点在する。
 古本屋回りをするには効率が悪かった。
  その点、早稲田大学はうらやましい。」 

 小生が学生生活を送った70年代はじめには、丸太町通りにあまり
やる気のみられない古本屋が何軒かありまして、そこをながしてから
百万遍までいくというのが一つのコースでした。この丸太町あたりには、
ぞっき本で垂水書房版の吉田健一集があったのが印象に残っています。
このあたりの古本屋というと、垂水書房の本が眼に浮かびますが、
あの会社の企画は、時代の先を行きすぎていて、猫に小判でありました。
 点在している古本屋のなかには、千本中立売あたりにあった店が印象に
残っているのですが、まったく書店名は記憶になく、小生の生活エリアから
遠く、わざわざといくという感じでありましたので、なじみになることは
なしで、縁がなくて終わりました。あの店は、いまでもあるのかな。