月刊京都 6月号3 

 月刊京都6月号の特集のページを開きながら、ぶつぶつと小言をいっている
おやじのようであります。これは難癖をつけるためのものではなく、思いがけ
ないところで、このような特集を見いだして、喜びながらも、なにか気の利いた
ことをいわなくてはと思案していることのあらわれであります。
 いかにも一昔前の古本屋とか古書展にいそうなおやじではなく、ちがった世代、
ちがった感覚の人たち(特に女性)が、古書とか限定本の世界に興味をもって、
古本ブログとか古本屋を経営するようになるなんて、小生の若い頃には想像も
つきませんでした。その昔にも古書店に文献とか、品切れになった書籍を探しに
きている女性はいたわけですが、最近の動きは、その時代とは違いますものね。
 女性がおやじ化したわけではなく、若い女性の雰囲気にあう古本の切り口と
いうのが確立してきたということでしょうか。
 古本屋をやっている女性の店主ばかりをとりあげた岡崎武志さんの本があり
まして、これは「ちくま」に連載された時に、毎月楽しみにして読みました。
もちろん、ブティックとかおしゃれな喫茶店をはじめるような感覚で、古本屋を
はじめてうまくいくのかどうかわかりませんが、そのような女性店主が店番をして
いるところを訪ねてみたくはなります。(女性の店番といっても、昨年の映画に
あった木村佳乃が出演したもののようにバイトの女性がすわっているというのでは、
だめで、うるさいおやじとも話ができるような女性店主がいるところですよ。)
 この月刊京都の特集で、湯川夫人が次のようにお話をしています。
「 限定本のコレクターはほとんどが男性なのですが、珍しく、たまに事務所に
 出入りしていた女性がおられて。限定本が欲しいけれど高くて買えないという
 男性と知り合い、主人の本が縁で結婚されたとか。うれしそうによく話してまし
 たね。」
 そういえば、この話題は「SPIN」04号に再録されている「はじめから限定本」
にでてくるものです。聞き手を山本善行さんがつとめ、「SUMUS」が初出です。
 山本さんの「女性のコレクターは少ないですかね。」という問いに、湯川さんが
次のように答えています。
「 まずいない。いても続かない。女性はリアリスト。蒐集という世界に対する
 価値の見方が男性とは全然違う。ただ、こういう例もある。
  昔、『北の岬』を出したあと、限定本ブームの頃、その本が手に入りにくい
 時代があったんです。ある若者がその本が欲しくてしょうがないんだけど、
 書店にでても高くて買えない。とろこがね、うちにたまに来てた女のこが
 その本を持っていた。その男、彼女を嫁にしてしもた。」
 辻邦生でありましたら、女性のファンが多いでしょうから、限定本にしても
他の本より女性には売れるかもしれません。
 昨日に難癖をつけた「限定本ブーム」という言葉は、ここにありました。