「奇縁まんだら」の楽しみ3

 「奇縁まんだら」の連載は、いまも新聞で続いているのですが、
人物としてインパクトがある人は、単行本となった初期の掲載期間で
ある程度は登場しているのでしょう。
 人物として興味がわくのは破天荒な生き方をしている文士たちで
ありまして、もともとが堅物なんて人は、ちがった仕掛けをしなくては
興味がわくようなエピソードもないようです。
 この一冊目に取り上げられた女性は、お二人でありますが、どちらも
すごい人たちであったようです。
それは宇野千代(1897年生まれ)と平林たい子(1905年生まれ)です。
宇野千代さんは、たいへん長命でありましたから、小生もマスコミなどで
姿をみかけたことがありますが、平林たい子さんは、1972年に66才で
亡くなったせいもあって、ずいぶんと昔の作家という感じがします。
 平林たい子さんがどのような作家であったのかいうことを知ることが
できたのも、この本のおかげでしょうか。
「 女流文学者会の熱海の温泉に招待されるということがあった。
  宿の大広間で宴会が始まった。床の間を背負って、一番真ん中に
 座ったのが平林たい子さんであった。当時の平林さんは54才くらい
 だったが、肥りに肥っていて、宿の浴衣の前があわない姿で、正座は
 出来ないとかであぐらを組んでいた。堂々として、あたりを圧し、
 文壇の女流大親分という感じだった。・・・・
  平林さんの笑顔のよさは定評があった。決して美人ではない平林さんが
 笑うと、実に天真爛漫な美しい笑顔になった。無邪気な純な表情になる。
  その笑顔を見ると、若い時から、数々の男遍歴を重ねてきたということも
 うなづけてくる。」
 
 宇野千代さんといい、平林たい子さんといい、「数々の男遍歴」という
ことからいうと女横綱クラスでありましょう。この女流文学者の会の宴会
には、円地文子さん、壺井栄さん、佐多稲子さんが並んでいるのですが、
この二人と比べるとおもしろみにかけるような気がします。
 この二人にかなうのは、たぶん瀬戸内寂聴さんなのでしょう。