垂水書房のこと

 「サンパン」14号に、西村義孝さんという方が「垂水書房と天野亮と吉田健一と」
という文章をよせています。これまで、垂水書房というのは、どういうなりたちの
出版社であるのかと思っておりましたが、この西村義孝さんの文章を拝見して、疑問が
氷塊しました。
 小生は、この会社の本は、ほとんどもっていないのですが、小生が初めて購入した
篠田一士さんの本が「現代イギリス文学」62年刊のものでありました。この本のあと
がきには、「出版に際して、よき友人天野亮氏の好意にあずかったことは、またぼくの
よろこびである。」とありまして、よき友人というのは、どういうつながりによって
であろうかと思ったのでした。
 小生が、京都で学生生活をおくっていた70年代はじめには、ぞっき本として、垂水
書房の本がたくさんでておりまして、それで一番おおくみかけたのが吉田健一さんの本で
ありました。いまから35年もまえの吉田健一さんは、間違いなくいまほどメジャーでは
なくて、このような著者に、こんなにも肩入れをするから、出版業がいけなくなるのだと
感じておりました。
 今回「サンパン」に「垂水書房」のことを報告してくださった「西村義孝」さんは、
吉田健一」本のコレクターであるということで、吉田健一本を10年以上にもわたって
蒐集しているのだそうです。
 吉田健一さんを軸に、河上徹太郎福原麟太郎ものをあつめているうちに、垂水書房の
本が80冊以上集まったとのことです。この「サンパン」14号には、確認できた
168冊の既刊分が出版一覧として掲載されていますが。これを見ますと、1967年秋まで
出版活動をしていたことがわかります。ということは、小生がよく古本屋でみかけた
時代というのは、垂水書房が破綻してまもなくのころで、あったようです。どうりで、
よくみかけたはずです。