読むこと、書くこと 2

 本日も、後藤明生さんの「小説の快楽」よりです。

「 私が受け持っている文芸学部日本文学専攻の特色は、卒業制作です。
 これは早稲田の文芸学科などでもやっているものですが、学部の卒業
論文に代わる卒業創作です。つまり、研究論文でもよろしい、創作でも
よろしい、ということで、いまのところ国文専攻の約六十名のうち、約
半数のものが創作を選択しています。・・・私の場合は、自分のゼミの
学生には、まず『何故、小説を書くのか?』と訊ねることにしています。 
 すると学生は一瞬、ケゲンな顔をします。つまり自分は小説を書きたい
から書くのだ、ということなのです。自分の感覚、想像力、衝動を小説に
書きたいから書くのだ、ということなのです。それ以上の理由は不要では
ないか。それはよくわかる。体験、アイデア、メッセージを表現したい
衝動、欲求はよくわかります。ただ、そこで訊ねたいのは、では何故それを
小説として書きたいのか、ということです。何故、小説という形式、
ジャンルを選ぶのか、ということです。・・私の結論はこうです。
すなわち、なぜ小説を書くか?それは小説を読んだからである。これが
私の小説論の第一原理です。」
 
 「小説は面白い」「小説はすばらしい」と感じさせられる体験をしたから、
自分も小説を書きたいと思ったと続くのですが、最近のけーたい小説の人は、
小説は面白いなんて思ったことがあるのでしょうか。