そんな小説があったのか

 昨日に文芸時評朝日新聞鴻巣友季子さん)を見ておりましたら、気に

なる本があがっていました。(最近の文芸時評は、平野謙などの時代とは全く

変わってしまって、文芸雑誌などを読んで、そこから目についた小説作品を取り

上げて紹介するというものではないですね。最近の人は、そんな時代のことは

知らないか。)

 今月の鴻巣さんの時評の見出しは、「少女小説の変遷」となっていまして、

その書き出しは次のとおりです。

「国内外の『少女小説』が豊作だ。その豊かな水脈の混交を見るに、18世紀頃

の『少女小説』から遠くへ来たものだと思う。」

 当方は少女小説と言われても、ほとんどぴんとこないのですが、最近の活躍し

ている作家に女性が多いことや、そのなかには、かってジュニア小説を手掛けて

た方がいることから、すこしうかがえることです。

 鴻巣さんは、少女小説の変遷を簡単にまとめたあとで、その系譜につながる

注目の作品として、次のように書いています。

「こうした歴史的観点からも特筆すべきは、明治大正生まれの女性教育者や作家の

姿を、膨大な考証とともに描きだした柚木麻子の群像劇『らんたん』だ。

主軸はキリスト教精神の下に恵泉女学園を創立し、大戦後は昭和天皇の処遇判断に

も関わった河井道の生涯と、彼女とシスターフッドを契った一色ゆりとの友情だが、

ここに津田梅子と協力者大山捨松の絆、村岡花子柳原白蓮の離反と和解も重ねら

れ、平塚らいてう新渡戸稲造も登場する。」

 少女たちの「力の源泉の一つは想像力の翼であり、女性同士の連帯『シスター

フッド』である」ということで、それが描かれた作品が「らんたん」となるので

すね。

 数年前まででしたら、この「らんたん」について、上のように書かれているのを

みても、まったく反応することはなかったでありましょう。

 一昨年にひょんなことから恵泉女学園に問い合わせをだすことになりまして、

それで恵泉女学園と当方の住む町の不思議なつながりを知るにいたりました。

 そのつながりとは、恵泉女学園創立者 河井道に由来するものでありまして、

河井は、北海道のスミス女学校を卒業後上京し、津田梅子の薫陶を受け、米国留学

を経て英学塾の教師となり、恵泉女学園開くのですが、北海道の親族(義兄)が

学園に寄付した土地が、その後の学園経営に大いに寄与したという話であります。

 シスターフッドではなく、本当の姉の力でありますが、これも含めて明治に生まれ

た女性たちには関心がいくことであります。

 ちなみに作者の柚木麻子さんは、恵泉女学園の卒業生とありました。なるほど。