「考える人」24号 2

 「海外の長編小説ベスト100」というのが特集でありますが、これは129人の
かたにアンケートをだして、その結果を集計してベスト1というのを決めたのだそうです。
なるほど、いまの時代にアンケートをするとこのような結果になるのかということで、
旧制高校的な教養主義で深刻にうけとめないほうがいいでしょう。読んでいない本が
上位にあがっていても、あせらないことがいいかなです。(そんな人は、最近では
いないか。)
 ガルシア・マルケスの「百年の孤独」が、第1位となっていることは、教養主義的な
色合いは薄いといえるでしょうか。ベスト10までにドストエフスキーが3作、
トルストイ1作、カフカ2作 プルーストセルバンテスメルヴィルですからね。
ここ150年くらいに書かれた新しい(?)海外小説が中心ですか。
 129人からあがっている本のタイトルはいくつあるのでしょうか。これのリストを
みますと250冊くらいはあがったのでしょうか。129人が各10冊あげていて、
タイトルが250冊くらいにまとまるということでしょうかね。このへんは、まだ
わかっていませんです。 
 それじゃ、このリストにない本をあげることができるかとへそまがりなことを考えて
しまいますが、リストの最後のほうをみたら、一人のかたがあげていたりして、なか
なかこれにあがっていないものをあげるのは難しいことです。アンケートを答えるに
あたって、若島正さんのように「当然ながら、客観的な評価はまったく考慮せず、わたし
個人の読書史になんらかの跡を残した小説ばかりを選んだ。」といえるのはうらやましい。
 この特集には、特別寄稿ということでD・ロッジの文章がのっています。D・ロッジと
いう小説家は、最近ではちょっと読めなくなってはいるものの、いまだに新刊がでる
たびにそれを購入しているほとんどただ一人の外国作家となっています。(マルケス
百年の孤独」がぶっちぎりで、そのほかはぶっちぎり感がなくて、こんなものかと
思ってしまうのでした。)
 ロッジは、ぶっちぎりはないのですが、コンスタントに得点を稼ぐという感じで
ありまして、小説の楽しさを味わうことができました。このリストには、「交換教授」
はあがっていましたが、小生がロッジ作品で一番好きな「どこまでいけるか」は
なくて、うーむ好みが違うなと思うのでした。
 ロッジは、特別寄稿「わたしの好きな10の長編」というエッセイで、次のように
書いています。

「好きな小説10作をあげることは、『名作ベスト10』を挙げることとは違う。
もちろん、このふたつのベスト10には重なる部分があるだろうし、そこで選ばれるような
本には一つの共通点がある。それは何度でも繰り返して読む価値があるということだ。・・
 『好きな』小説といえば、それは文学的な価値が高いだけでなく、なにかしら心に訴え
かけてくる力をもっているものをさす。作者に親しみを感じるとか、人生のどこかで
強烈な影響を与えられたとか、あるいは何かほかの個人的な思い入れがあるとか、なんに
せよ自分にとって特別な意味をもつ作品、それが自分の好きな小説ということになる。」
  
 どうということもないのでありますが、ひいきの作家 D・ロッジがこのように書くと、
大きくうなずいてしまうのでありました。