デビッド・ロッジ自伝を読んだために、ブッカー賞を受けた作品に関心が
行きました。ちょうどデビッド・ロッジが選考委員長を努めたときに この
賞を受けたのがカズオ・イシグロの「日の名残り」でありまして、ロッジは
この年の候補作のなかでは群を抜いていたとあったので、この作品を読んで
みることになりました。
これが面白かったのですね。一般的には退屈が売りのようなイギリス小説
はなかなか楽しく読むことができないのですが、これはどうして読めたのか
です。そんなふうに思っていたら、この「日の名残り」文庫本には、丸谷才一
さんによる解説が掲載されていて、久しぶりで丸谷節を堪能しました。この
解説を参考に、この作品をもう一度読み直したいと思いながらも、まあ面白
く読むことができたのだから、それでいいではないかとも思うことです。
なるほどブッカー賞というのは、このような作品が受けているのかと思って
いましたら、昨日のブックオフで帯にブッカー賞受賞作と刷り込まれている
小説を発見です。
当方が見つけたのは元版のほうでありました。作者のクッツェーはブッカー賞
をこの作品と、それ以前の「マイケル・K」で二回受けていて、2003年ノーベル
文学賞を受けているのでした。
名前は知っていても、どのような作家であるのかは知りませんでしたが、ロッジ
からのブッカー賞つながりで、手にしてみることとなりで、これもブックオフの
おかげであります。
冒頭からの80ページほどを読んでいるのですが、「恥辱」という作品はイシグロ
の作品とはまったく雰囲気の違うものでありまして、南アフリカを舞台にした小説
というのは読むのが初めてのせいも新鮮な読書体験であります。
ブッカー賞を手がかりに小説を読んでいましたら、1月16日朝日読書欄に昨年12月
に亡くなった「ジョン・ル・カレ」になぜブッカー賞が与えられないのかという
言葉を紹介しているのを発見です。筆者は作家の松浦寿輝さんですが、このように
発言しているのは、英国の大御所作家さんだそうです。
「ル・カレの小説になぜブッカー賞が与えられないのか、彼こそ二十世紀後半の英
国が生んだ最重要の作家なのに、と言ったのはイアン・マキューアンである。
英国『純文学』界の雄であるマキューアンがそう断言しているのだ。わたしはその
意見に完全に同意する。」
この松浦さんのくだりが頭にあったからか、先日のブックオフでは思わずル・カレ
の小説まで買ってしまいました。