書肆山田の本

 昨日に、詩書を中心として出版をしている書肆山田からでたシリーズ「草子」が
高い値段で古本目録にのっていたと記しました。今の書肆山田は、代替わりをして
しまっているのですが、初期の書肆山田はどういうものをだしていたのかと思って
検索をかけましたら、ちゃんと書肆山田のホームページがありまして、これまでの
出版目録に相当するものが、ページにありました。
 これを見ましたら、昨日に元の値段の10倍で価格がついていました飯島耕一さん
の「ゴヤをみるまで」という冊子が、在庫僅少ということでのっていました。
在庫が残っているというだけでも、すごいことであります。74年8月の刊行です
から、実に34年も残っていることになります。どのくらいの部数を作っているのか
ですが、たぶん、書肆山田に注文をしましたら、定価であります360円で買うことが
できるのでありましょう。たぶん、どう考えても、こちらのほうを確保したほうが、
賢い買い物となるようです。
 書肆山田で一番売れたのは「日本のライトヴァース」シリーズでしょう。小生の
ところにあるシリーズの一冊目「暖爐棚上陳列品一覧」の後付けにある発行人は
「鈴木一民」さんとなっていますが、ここには発行年がおちておりまして、そういう
ことからはけっこうな珍品であるといえるかもしれません。谷川俊太郎さんが編集した
とあり、あとがきには、次のようにあります。
英米詩でいう『ライトヴァース』にうまい訳語のみつからないのは残念だ。『軽い
詩』なんて言ってみても、どうもぴったりとこない。
 もともとが借り物の概念だから、日本詩にあてはめようとおもっても無理な話で
あることは承知の上で、こんなアンソロジーを計画したのは、一読してせめて微苦笑
くらいはできる楽しい詩が、我が国の同時代の詩の中にもあるということを、少々宣伝
したいという気持ちが働いたからかもしれない。」
 このアンソロジーに取り上げられている「矢川澄子」さんの「ふしぎの国」という
詩を以下に貼付けましょう。
「 一穂さんは悲しく
  順三郎さんはさびしい
  修造さんははなやぎ
  由起夫さんはあわれ
  詩人たちは貧しく 
  男たちはよわい
  子供たちはたわむれ
  そしてたがいに傷つく
  わたしは女の子
  母たちはさかえ
  石女だけが
  美しくほろびることができる 」

 矢川澄子さんの生き方と、亡くなったときのことを考えますと、この詩は微苦笑と
いうよりも、あまりにも切実で、「ライトヴァース」なんて思えないのであります。