おじいさんの本

 先日に届いた矢川澄子さんの本には、古書店のちらしが同封されていたの

ですが、それには「おじいさんの本買います」と大きくプリントされていま

した。

 「おじいさんの本」についての説明は何もないのでありますが、これは

「おじいさんのランプ」が下敷きになっているのでしょうかね。もちろん

新美南吉のお話でありますよ。ランプを売っていたおじいさんは、電灯が

普及するようになって、ランプを捨てて、町で本屋を開業するのだそうです

が、「おじいさんの本」というのは、おじいさんが大切にしていた本という

ことでいいのでしょう。

 このちらしを受け取った当方が、まず感じたことは「おじいさん」という

のは当方のことであるのか、それとも亡父のことであるのかということで

ありました。これを亡父とすれば、昨日に掲げた土屋文明先生の歌集など、

一番大切にしていたものであって、これを売るということですね。

 自分の本を処分する以上に亡父が遺した本を整理するというのは、難しい

ことであります。当方もおじいさんと呼ばれるようになって、歴史を繰り返し

てはいけないのかな。

 それでも矢川澄子さんの「野溝七生子というひと」は買って大正解であった

のですね。