「読書アンケート」3

 本日の朝日新聞夕刊を見ましたら「桑原甲子雄」さん訃報がのって
いました。新聞の紹介記事は、次のごとくです。
「 戦前戦後の東京の姿を情感豊かに記録した、写真家で写真評論家の
桑原甲子雄さんが昨年12月10日、老衰のため死去した。94歳だった。
葬儀は親族で済ませた。・・
 幼友達の濱谷浩さんの影響で、写真雑誌への投稿を始める。・・
2・26事件のときの皇居周辺の光景など、投稿時代に撮った30年代の
東京の写真がよく知られている。」
 桑原さんの写真集というのは、一番いい時期の晶文社からでていたように
思います。
* 『満州昭和十五年ムム桑原甲子雄写真集』(晶文社、1974年)
* 『東京昭和十一年ムム桑原甲子雄写真集』(晶文社、1974年)
* 『一銭五厘たちの横丁』(児玉隆也との共著、晶文社、1976年)
* 『私の写真史』(晶文社、1976年)
  * 『夢の町 桑原甲子雄東京写真集』(晶文社、1977年)
  
 2・26事件は、昭和十一年のことですが、この年には「阿部定事件」も
ありました。そのままずばり「小説 昭和十一年」という作品が小沢信男さんに
ありまして、これには、いかにも桑原甲子雄さんの写真が似合いそうでした。

 みすず「読書アンケート」を見ていましたら、桑原さんの写真が収められた
一銭五厘たちの横丁」(岩波現代文庫)を栗原彬さんがとりあげていました。

「 一銭五厘のはがきで召集された出征軍人に送るために桑原甲子雄が撮った、 
 下町の横町に住む留守家族の記念写真は悉く氏名不詳。児玉隆也は、残された
 写真を手がかりに、写真の人々の30年後を訪ね歩いた。天皇から一番遠く
 住んだ人々の昭和史が、氏名不詳のままに愛しみをもって私の記憶に刻印
 される。写されなかった百枚目の写真は誰か、という問いとともに。」

 桑原さんの関係した著作で、一番入手しやすいものは、岩波現代文庫版の
一銭五厘たちの横丁」のようです。小生は、ブックオフで入手して読んだ
記憶がありますが、これを機会に、また手にしてみることといたしましょう。