小沢信男著作 66

 小沢信男さんのことは「東京っ子」とでもいえばいいのでしょうかね。
 江戸っ子というのは、すくなくても何代かにわたって、東京の下町地区に居住して
いなくてはいけないとか、きまりがあるようですが、当方が使う「東京っ子」には
面倒な定義はありません。
 昨日に引用した「いまむかし東京逍遥」のあとがきにある「処は東京、時は昭和、
いまだに時代錯誤の二本脚で、なんとなくそこらを歩いている。」というのは、いか
にも「東京っ子」の成長した姿でありましょうか。
 さて「いまむかし東京逍遥」の書影です。

 これは晶文社「犀の本」の一冊として1983年12月20日に刊行されました。
定価は980円。装丁はもちろん平野甲賀さんで、表紙写真は桑原甲子雄さんです。
この写真はいいですね。晶文社からでている桑原さんの写真集への説明を見ますと、
昭和十年代から東京下町の風景を撮影したとありますので、これは戦前の写真の
ようです。(このような風景は、戦火にあわなかった日本の都市のあちこちに、
戦後の高度成長がはじまるまで残っていたものです。当方の小学校入学は1957年頃
のはずですが、いなかでありましたので、電信柱は普通の木の電柱といわれるもの
で、しかもこれよりも、ずっと背が低いものでした。)
 中央にうつっている小学生とおぼしき少年の服装は、坊主頭に学生服、はだしに
下駄ばきで、東京っ子と呼びたくなります。