改造社とその時代

 高杉一郎さんが生前の最後に出演したというお知らせをいただいたので、本日の
NHK ETV特集をみておりました。番組の見出しには「禁じられた小説」とあって、
これに続いて「続夫婦善哉発見」「改造原稿7千枚が物語る言論統制の真相」とあり
ました。
改造社とその時代」ともいうべき番組でありますが、番組の最後のところで現存する
編集主任として高杉一郎さんが登場し、雑誌「改造」の編集者として証言をするので
ありました。番組のなかでは、この1月9日になくなった高杉さんと紹介されますので、
取材は、ぎりぎりで間に合ったということになります。99歳というお年ではありますが、
しっかりとした口調でお話をされ、最後まで現役のインテリであったという印象を持ちました。
 この番組をみて、はじめて山本実彦さんの資料館が鹿児島県川内市にあるなんてことを
知った次第です。雑誌と単行本をもって出版をしているというのは、中央公論社文芸春秋社
講談社そのほかとありますが、このなかで、中央公論社改造社は、当時のお役所に解散を
なかば強制されて、それを受け入れ、改造社は、そのまま復活することがありませんでした。
 このへんは、社長であった山本実彦さんの考えによるところが多いのかもしれませんが、
戦後の世代にとっては、中央公論社とか文芸春秋社のものは、新刊を手にしたことがあるの
ですが、改造社は、古本でしか接したことがありませんでした。
 我が家にあった改造社の本といえば、やはり「円本」でありましょう。本日の番組で
円本といわれた文学全集がうつっておりましたが、父の本棚にも、これが何冊かありました。
(特徴ある装丁は杉浦非水であったように記憶しています。)
これを手にしたことはあるのですが、ぱらぱらとなかをみても、読みにくい感じを受けた
ので、この円本で、小説などを読んだと言う記憶はありません。
 改造社では文庫もあったように思いますが、父の世代にとっては庶民の講談社、すこし
インテリのための「改造」で、うんと高級な「岩波」という感じだったのでしょうか。
雑誌「改造」は大正8年くらいの刊行ということですから、誕生は小生の父とほぼ同年と
いうことになります。雑誌「改造」が出版されていた時代は、父の青年時代のことであり
まして、講談社の雑誌「キング」を読んでいた話は聞いたように思いますが、「改造」に
ついてはどうだったのでしょうか。いなかには、改造を取り扱っている本やなんてあったで
しょうか。
 一つの雑誌を通して、時代と世相を語ることができるなんてことは、そうそうできる
わけじゃありません。最近のものでは、どのようなものが思い浮かびますでしょう。