「シーズンズ・グリーティング」

 「シーズンズ・グリーティング」ということばがあるということは、今から
10年あまり前にでた「山下達郎」さんのアルバムタイトルで知りました。
 あのアルバムは、クリスマス時期に聞かれる曲が中心におかれているので、
それで「季節のあいさつ」というとなんとなくクリスマスソングのことを思い
浮かべるようになっています。
 インターネットラジオのある局は、休日の音楽というプログラムを流している
のですが、一日いっぱい「クリスマスソング」であります。それだけクリスマスに
まつわる曲が多いということでしょう。NHKFMまでもが、半日クリスマスソングの
特集をやっていました。アメリカ文化の影響にどっぷりとつかっている戦後世代に
は、お正月よりもクリスマスのほうが季節の行事という感じになっているので
ありましょうか。
 本日のNHKFMでは、60年代はじめの日本でのクリスマスソングを題材とした
コミックソングをやっていましたが、トニー谷クレージーキャッツが演奏を
していました。40年以上たっても新鮮に聞くことができるのですが、当時の
人たちは、米軍のキャンプで演奏をしていたのですから、今の時代以上に、
お客が国際的であったことは間違いないことです。

 キリスト教の信者さんたちに、クリスマスは特別な日ですから、歌だけでなく、
映画や小説などたくさん取り上げられています。
 さて、日本ではどのようなものが思いつくでしょう。
 そう思って、熱心な信者さんを家族にもった「阪田寛夫」さんの文芸文庫を
みておりましたら、「うるわしきあさも」の最期におかれた遺稿のなかに、
ありました。

「  鬱の髄から天井みれば

  見えるのは内田百けん先生の闇の土手でなく
  小沼丹さんの遺作『馬画帖』の馬の瞳です。
  本名を救という小沼さんのお父さんは牧師さん、
  下町のセツルメントの館長でもあり、絵が上手
  集まってくる貧しい家の子どもたちに絵を描いてみせた 
  私小説風な作家に分類されている小沼さんの作品に
  そんな話が一切でてこないのがふしぎでした。
  その小沼さんが亡くなる前に黙りこくって大学ノートに毎日描き続けたのは、
  かって小屋の中で誕生した幼子を見守った筈の短い足の馬たちでした
  その優しく和らいだ瞳の絵でした 
  わたしはもはや言葉を失い文章もかけませんが、
  『馬画帖』の馬の瞳を思い描くことはできます
  小沼丹さんありがとうございました    」