山川みどりという人

 山川方夫さんが若くして事故死したとき、結婚したばかりの奥様が残された
のでした。この奥様とのツーショット写真は、旺文社文庫「安南の王子」の
なかにも掲載されていて、お気の毒に、この若さで未亡人になるとはと同情
したのであります。山川方夫さんは、こどもの時に日本画家であったお父上を
なくして、その後、母上が苦労して一家を支えたとありましたので、山川
みどりさんも、一人息子の嫁として苦労をするのかと思ったものです。
 亡くなってから刊行される山川さんの小説集の奥付には、著作権者として
山川みどりさんの名前が記されていて、そうか、まだ山川みどりさんは、
独り身でいるのかと気の毒に思っておりました。
 それから何十年もたってから、この山川みどりさんが、「芸術新潮」の
編集長となっていることを知りました。このときには、思わずうっそーと声が
あげました。小生が知るにいたったのは、山川みどりさんが定年で新潮社を
退職するころに自ら書いた文章かなにかを目にしたためです。
 山川みどりさんは、退職後は「考える人」に連載を書いていたりしますが、
そのうち、山川方夫さんとの短い結婚生活について文章を発表したりすることが
あるのでしょうか。
 作家であるご主人がなくなってから大学院に進学して編集者になったという
ことからは、ご主人が健在であれば、編集長 山川みどりさんは誕生しなかった
ということでしょうか。