これは恋ではない

これは恋ではない―小西康陽のコラム 1984‐1996

これは恋ではない―小西康陽のコラム 1984‐1996

 バラエティブックというと、晶文社の一時期の刊行物が代表的なもののようです。
 津野海太郎平野甲賀コンビによる書籍は、内容と本文のレイアウトによって
現在の出版物にも影響を与えているようです。岡崎武志さんも、自分の書いたもので
「バラエティブック」をつくりたいと書いていましたですね。
 
 晶文社が低迷しているなかで、最近のバラエティブックといって頭に浮かぶのは、
小西康陽(「ピチカートファイブ」という音楽グループのリーダー」)さんが
96年に刊行した「これは恋ではない」幻冬舎です。
 どうして、この本のことを知ったのだろうかと思って、ネット検索をしてみましたら、
晶文社のバラエティブックへのオマージュから、岡崎武志さんが小西さんの本を
推薦していた文章などがのっているページにあたりました。

http://expop.net/shtml/book0031_varietybook.shtml

 小生が、この本を手にすることになったのは、岡崎さんの「古本でお散歩」で
みたからであったということがわかったのでした。

 小西さんは、おしゃれでセンスがよろしいとなっていますので、本文のレイアウトも
こっているのでした。文章が読ませるものでなくては、とってもつき合いきれないので
ありますが、ものをよくわかっていて、うるさいおやじたちも共感を覚えます。
 小西さんは、59年うまれということですから、団塊の世代とは一回り近くも下の
世代となります。

「 ぼくはもともと本を読まない。・・そういうタイプの70年代育ちの活字離れを
食い止めたのが晶文社の功績だ。つまり1ページ目から最終ページまで順に進む、
というルールのない本を作ったのであって、そんな晶文社の編集者はよほど頭がよくて
本好き=フェティシストだったに違いない。・・
 さて平野甲賀のファンならまず手にいれなくてはいけないのが、リブロポートから
でている『平野甲賀 装幀の本』。 サイのマークのない本がこのページにでてくる
のはルール違反だ。なんていってはいけない。そもそも間違いを起こしたのは晶文社
ほうで、この質量ともに圧倒的な作品集を他社に出し抜かれたあとで、あわてて『装幀
術』などという本をつくったころから、ぼくたちの世代の晶文社離れは始まった。
 ( 「これは恋ではない」から「晶文社の本」)

 この文章は雑誌「ブルータス」に掲載されたものですが、小西さんの文章は、小生が
日頃マークしていない雑誌とうに寄稿されていまして、このように取り上げられなければ、
ほとんど小西康陽さんとは縁がなくして終わったように思います。
 開高健さんが、新しい料理のことを「新しい天体」と呼びましたが、新しい書き手も
また、小生にとっては、新しい天体であります。