洲之内徹没後20年

 洲之内徹さんの「気まぐれ美術館」シリーズについては、数冊の単行本に
まとまった段階で知るようになったのですが、単行本としてはけっこう高い
ものでありましたので、とっても購入できるものではありませんでした。
 シリーズが4冊くらいになったころには、新刊本屋の棚に、同じような
箱入り、装丁でならんでいて、気になる存在ではありました。
 小生が親しむようになったのは、このシリーズが新潮文庫にはいったことが
きっかけでありまして、「気まぐれ美術館」の文庫化は、新潮社の近年の
最大のヒットであると思われたものです。つぎつぎと文庫にはいって、
これであれば、全6冊が文庫となるのも近いなと思ったところで、ブレーキが
かかり、全体の半分となる3冊でとまってしまっているのでした。
これってないよなと思いながら、残りは単行本で探しましょうと考えたのですが、
一部はネットにお世話になりながらも、わりと安い値段で6冊をそろえることが
できたのでした。
 全6冊のうち最後の一冊となったのは、「人魚を見た人」であったと思います。
サイン本で、相当に値段の高いものはネット古書店にあったのですが、こちらは
安くて読むことができればよろしいので、しばらくでてくるのを待つのでした。
結局は、何年かかかって揃えたように思います。
 そのころ「日本の古本屋」で検索をかけても、「洲之内徹」さんでは何冊も
ヒットしなかったのです。それとくらべると、最近は、人気が高くなって
いるせいもあって、ずいぶんとひっかかる本が多くなっているようです。
 「きまぐれ美術館」全6冊を一括で筺にいれたものが21,000円で
復刊しました。あちこちのブログでも、すでにこのシリーズを入手している
人たちからは、これを購入すべきかどうか迷っているとの声があがっていますが、
これは没後20年を記念したものだそうです。
 この一括復刊とあわせるように、94年「芸術新潮」での「洲之内徹特集」が
とんぼの本」で入手できるようになりました。
 しかし、亡くなってこのように時間がたってから「気まぐれ美術館」が人気が
あがるとは、ご本人は思ってもいなかったでしょう。
 シリーズ4冊目となる「人魚を見た人」のあとがきには、次のようにあるので
した。
「 この本は芸術新潮連載『きまぐれ美術館』の4冊目の単行本である。つまり、
連載はもう12年も続いているわけで、連載をはじめたときは、よもやこういう
ことになろうとは自分でも思わなかったが、果てしなき旅路とは相成った。・・
 私の本はあまり売れないらしくて、こんどの本の装幀がこれまでの本とは一変
したのも、こうしてみればすこしは売れるのではないかという編集部の苦衷の
存するところである。」(昭和60年11月刊)

洲之内徹 絵のある一生 (とんぼの本)

洲之内徹 絵のある一生 (とんぼの本)