新潮「波」のお楽しみは

 本日の午後に外出より戻りましたら、「みすず」「波」「一冊の本」がそろっ

て届いておりました。月がかわっての初日にですが、二月はいつもよりも短いの

ですから、編集担当の方はお忙しかったことでありましょう。

 「みすず」表紙裏の小沢信男さんの「賛々語々」を拝見してから、次は「波」

のお楽しみ編輯後記をチェックすることにです。

 「波」の後記は、編集兼発行者の「楠瀬さん」が書かれているのでしょう。

書き出しは次のとおりです。

川本三郎さんの「『細雪』とその時代」がでました。著者は本誌『荷風の昭和』

荷風と東京』など荷風論、東京論の第一人者。それが谷崎、しかも阪神間が舞

台の大長編小説を論じる。面白そう。この本の前にと慌てて関西移住後の谷崎を

数冊読みました。」

 川本三郎さんは「波」誌上で現在も「荷風の昭和」を連載しているとはいうも

のの、「『細雪』とその時代」は中央公論社が版元でありました。

『細雪』とその時代 (単行本)

『細雪』とその時代 (単行本)

  • 作者:川本 三郎
  • 発売日: 2020/12/08
  • メディア: 単行本
 

  もちろん当方は、川本さんのこの本のことを知らずでありましたので、この

後記を読まなくては気づかずに終わったでしょう。

楠瀬さんは、これで終わりましたら中公の宣伝になってしまいますので、これに

続いては「新潮社」話題にもっていきます。

「谷崎が戦後になって、改めて上方上流階級の醜聞へと踏み込んだのが『週刊

新潮』創刊号から連載した『鴨東奇譚』でした。勿論尊敬する荷風の『濹東綺

譚』の向こうを張った題名。・・・

 『週刊新潮』は文豪の話題作として創刊号の表紙に大きく謳います。しかし

モデルのQ夫人の猛抗議に遭って第六回で中断。・・

右の顛末は、京都生まれの編集者伊吹和子さんの名著『われよりほかに』詳し

いです。」

われよりほかに―谷崎潤一郎最後の十二年

われよりほかに―谷崎潤一郎最後の十二年

 

 こちらの本の元版は、講談社でありましたか。それにしても「週刊新潮」の

創刊時に谷崎がこのような連載をしていたとは知りませんでしたが、これは

中央公論社の一番新しい全集には収録となっているのでしょうか。

 これで終わっていましたら、新潮社の刊行本への言及がないままで終わりに

なるのですが、「波」は送付先住所が記されている紙面に本を紹介するところ

がありまして、ここで出版部Kさんの名前で谷崎の「細雪」を取り上げていま

した。この紹介と編輯後記は内容がすこしかぶりますので、こちらのKさんと

は、後記の楠瀬さんでありましょう。

「ずっと読んだふりをしてきた『細雪』をついに読みました。ものすごく莫迦

みたいなことを言いますが、これがむちゃくちゃ面白かった。」

これが書き出しとなります。当方も「細雪」は、いったいいくつの刊本を確保

したかでありますが、結局は60歳を過ぎてからやっと読みあげることができた

のですが、これが読むことができたのは関西との間にLCCが就航したおかげで

ありました。

 ちなみに新潮社出版部のKさんは、「細雪」は新潮文庫に入っていると

ありました。

細雪(上) (新潮文庫)

細雪(上) (新潮文庫)