小田実追悼

 小田実さんがなくなりました。最近は、たまに新刊がでても
購入することはなくなっていましたので、ずいぶんと前から
縁遠くなっていたようです。亡くなって、手近にある著作を
手にしようと見回しているのですが、いつも作業をしている
居間には小田実さんの本がおかれていないのでした。
 しかし、60年代後半から70年代はじめにかけては、
小田実さんの存在感というのは、圧倒的であったように思います。
彼の「世直しの論理・・」なんていう岩波新書は、ほとんど
一家に一冊の本という趣であったかもしれません。
硬直化したセクト主義の面々と論争をするときに、小田実さんの
人間みんなボチボチ主義というような知的なスタイルは有効に
機能したように思います。
 小田実さんというのは、われわれの世代にとっては在野の
思想家でありますが、同時に予備校の名物教師でした。
代々木ゼミ職員ということで、いくつか授業を受け持つかたわら
寮の舎監というような肩書きを与えられていました。予備校の
広告塔のような役割をになっていたのでしょうか。
あの時代からの予備校には、アカデミズムに受け入れられることを
断念せざるを得ない、学者くずれがずいぶんと職を得ていたようで
あり、そのなかから、渡辺京二とか、山本義隆なんていう人たちが
でてきました。
 小田実さんも、もとはといえばフルブライト留学生でアメリカに
わたり、言語学をまなんだという立派な学歴でありますが、
どうしてそうしたはなばなしい経歴をすてることになったのか。
彼のものを読むとしたら、なにがみつかるでしょうね。