とにかく本を読んでもすぐに忘れてしまうのでありまして、じっくり読んで
も、ななめ読みしても、数日後に記憶に残る箇所は、そんなに変わらない
かもしれませんです。
先日に「みすず」12月号 小沢信男さんの「賛々語々」には、辻征夫さん
の詩から、黒田杏子さんの俳句につながるくだりがありました。
「辻征夫詩集『ヴェルレーヌの余白に』を古本屋か図書館でみつけたら、
『これはいにしえの嘘のものがたりの』と題する詩を立ち読みしてみてく
ださい。」
とありまして、そのあとで、この詩の部分を紹介するのですが、今月の締め
に置かれる句は、黒田杏子さんの次のものとなりです。
「 立読みのうしろに冬の来てをりぬ 杏子 」
昔の本屋さんですね。入口が引き戸になっていて、外におかれた平台に
週刊誌や月刊誌がおかれているようなところ。最近はとんとこのような本屋
さんを見かけることがなくなりました。(京都 三月書房さんは、そんな雰囲
気がありますね。)
こういう本屋さんの入口付近で、立見していたら、風が吹き込んできてけっ
こう寒く感じましたです。
先日には、ビルにはいっている大書店で立見をすることになったのですが、
最近は、親切に椅子などが用意してありまして、一時間ほどゆっくりと中を
チェックすることができました。
気になっていた小田光雄さんの「古本屋散策」です。これの続編「近代
出版史探索」は図書館に入っていて、走り読みできたのですが、鹿島茂さん
が今年のドゥマゴ 文学賞に選考したもので、毎日新聞書評欄でも鹿島さん
今年の一押しとなっているものです。
これはありがたしで、目次をみながら興味のあるところを読んでいくことに
なりです。小田さんは同年生まれですので、ほぼ同じような年代に、同じよう
な読書体験をしていたりです。たとえばということで、具体例を記そうと思う
のでありますが、どのようなことが書かれていたのか、ほとんど忘れている
ことです。それでも、あちこちにそうだそうだと相槌をうつ箇所があったこと
は覚えています。おすすめの一冊で、どこか大きな書店で見かけたら、ゆっく
りと座って手に取ってみてください。
もうひとつ立見したのは、「すばる」1月号にあった「私の偏愛書」という特集。
50人が偏愛の一冊をあげているのですが、おおっと強く印象に残ったのは、
武田砂鉄さんがあげているもの。
武田さんは、ナンシー関さんの本を偏愛の一冊としてあげ、そのなかでもベスト
オブナンシーの書き出しとして、砂鉄さんと名前がかぶる金八役者さんについて
書いたナンシーさんの文章を紹介しています。
これには当方も両手をあげて賛成でありまして、ひょっとして武田砂鉄さんと
は相性がいいのかもしれないぞと思ったことです。