そのむかしに白水社で出版している本にもフランス装 アンカットのものが
ありました。もちろん、ページをきっていないのですから、本を読み進める
ためには、ペーパーナイフが必要になったのでした。
たしかアナトール・フランス小説全集などは、こうしたアンカット版であった
ように思います。これでは、読んでいないとすぐにばれてしまうのでありました。
(これとは、まったくちがうのですが、早川書房からでた「ローズマリーの赤ちゃん」
などは、最後の章かがふくろとじになっていて、これをそのままにして返却したら
返金に応じますなってのを売りにしていたことがありました。)
フランス装というのは仮の装幀でありますから、購入したひとが、あらためて
装幀家に依頼して革装などでかざったのでした。
最近に、ブックオフでワンコインで入手した堀辰雄の「聖家族」は近代文学館が
編集した復刻物でありますが、江川書房版のレプリカで、フランス装であります。
レプリカというような出来映えかどうかは難しいですが、このようなものがなくては、
「聖家族」の雰囲気の片鱗にふれることもできないことです。
この復刻本は、読まれた形跡がなしですから、もちろんアンカットでありまして、
これにペーパ−ナイフをいれるのはためらわれることです。