「世界は舞台」あとがき

 林達夫さんを囲んで、中村雄二郎山口昌男が鼎談を行って、それを一冊に
まとめたのが86年の「世界は舞台」であります。この本のあとがきは、
山口昌男さんが書いているのですが、この本の仕掛け人は、後に岩波の社長と
なる大塚信一さんでありました。
 山口さんのあとがきは次のごとくあり。
「私は林達夫の後継者を以て自ら任じようとはする意志は毛頭ない。林達夫は、
林達夫として生まれ、自身で育てた人に過ぎないと思っている。とはいうものの、
林達夫を育てた時代はエノケンを育て、村山知義を育て、蘆原英了を育て、
秦豊吉を育て、田河水泡を育てた時代である。日本近代のなかで、最もおもしろい
時代を指せといわれるなら、わたしは躊躇することなく、昭和一桁をあげるだろうと
思う。」
いまとなってはけっしてメジャーではない人々でありますが、蘆原英了さんという
のは、シャンソンの評論家で、NHKでラジオ番組をもっていて、小生が高校の
ときくらいまで番組はやっておりました。小生が好みの「虚無への供物」にも
蘆原先生のラジオ番組を聞かなくてはというくだりがあるのですが、蘆原さんは
新宿書房から著作がまとめられているのですが、いまでも入手かのうなのかな。