中公文庫 40周年 10

 昨日からは、中公文庫の最新解説目録にのっているものを話題にしています。
 林達夫さんから山口昌男さんの流れにあるものとして、最新のものはなんといっても
次のものでありましょう。

若い読者のための世界史(上) - 原始から現代まで (中公文庫)

若い読者のための世界史(上) - 原始から現代まで (中公文庫)

 購入していまだに読むことが出来ていないのですが、ゴンブリッチなんて名前が頭に
はいっていたのは、山口昌男さんの「本の神話学」のおかげでありました。
 そういえば、山口昌男さんが札幌大学での講義を一冊にした「学問の春」は、
ホイジンガの「ホモ・ルーデンス」をテキストにしています。これもまた中公文庫に
健在でありまして、この本の翻訳者あとがき(高橋英夫さん)には、林達夫さんのすす
めにより翻訳に取り組んだとあったはずです。
ホモ・ルーデンス (中公文庫)

ホモ・ルーデンス (中公文庫)

 最新の中公文庫解説目録のなかに林達夫さんの関わりを探してみるというのも面白い
かもしれません。その昔とくらべると、見えにくくなっていて、考古学のような発掘
作業が必要となるようです。
 文学系では、谷崎潤一郎のものが他の文庫を圧倒しています。当然と言えば当然であり
まして谷崎全集といえば中央公論社でありますからね。現在の文庫では再編集していて
テーマ別で「ラビリンス」としていますが、ちくま文庫のように全集をそのまま文庫化
するというのもありだと思うのですがね。今では、そんなに売れないか。昨年に新書版
谷崎全集で「細雪」を読むことができたので、ついつい文庫版全集ということを思って
しまいました。
 辻邦生さんのものも「背教者ユリアヌス」がずっと健在なほか、「嵯峨野明月記」が
あって、思いがけず「春の戴冠」が加わりました。作品数としては少ないのですが、
どちらも大長編で読みごたえがあります。これにあわせて佐保子夫人のものもどうぞと
いう感じですが、これは武田泰淳と百合子夫人を思わせます。
 
辻邦生のために (中公文庫)

辻邦生のために (中公文庫)

 最近の作家で目録で軒をつらねているのは、保坂和志さんと堀江敏幸さんであります。
どちらも人気ある作家ですが、保坂さんは小島信夫さんとの関係で関心があるも、まさ
なじむことができていません。堀江さんは、「回送列車」という表題で統一したエッセイ
が中公文庫よりシリーズ化しています。
回送電車 (中公文庫)

回送電車 (中公文庫)

 堀江さんの「回送電車」が出続ける限り、中公文庫の新刊案内に関心をもつことになり
そうです。これの背表紙の色はグレーであります。堀江さん、中公文庫、グレーという
ことになります。