昨日、ブックオフによったときに百円棚で本を物色しておりました。
そこで購入したのは、丸谷才一さんの「挨拶はたいへんだ」であります。
その昔にでた丸谷さんのあいさつものは、すぐに購入したのですが、01年に
刊行されたこの本は、そのうちに安くなったら購入するわいと思っていて
ここまできていたのです。
ぱらぱらとページをめくっていて、「放浪王子のような生き方」という表題で
英文学者の「永川玲二」さんを偲ぶ会におけるあいさつに目がとまりました。
永川さんは、高松雄一さん、丸谷さんとともに、ジョイス「ユリシーズ」の
翻訳をしたかたです。ほかにどのような業績があるのかはしりませんが、
あの河出書房の「グリーン版文学全集」に2冊本として、「ユリシーズ」の
翻訳はでていたのです。
小生が、このかたの名前を一番最近に目にしたのは、アンダルシアを旅
して、そこでの暮らしを紹介するテレビ番組に永川さんの旧宅がうつって
いたからであります。
このブログを作成するために検索をかけてみましたら、永川さんは陸軍幼年
学校を脱走して、その話からアイディアを得て、丸谷さんは彼の代表作である
「笹まくら」を書いたとありました。
偲ぶ会での丸谷さんのあいさつには、次のようにあります。
「あんなに魅力があって、しかもあんなに傍迷惑な人は滅多にいないのじゃ
ないでしょうか。心が優しくて、筋が通っていて、友情に厚くて・・・
しかも実際的な生活ではだめなんですね。そそっかしいし、不器用だし、世間
普通の常識を知らないし、しかも平気で嘘をつく。もうすこし上手についてよと
たのみたくなるくらい、子供っぽい嘘をつく、でも怒る気になれないし、
すくなくとも我慢するしかないと思わせる。そういう人でした。・・
私たちは生きていく途上で、ときどき初心を忘れ、冒険の意欲が薄れることが
あります。そういうときに、まるで神話にでてくる放浪の王子のような彼の生き方、
彼の面影を思い浮かべることは、自分を励まし奮い立たせるのに非常に役にたつ
ような気がします。」
なんとなく、このひととのつきあいも、塩一トンのように思えますが、そういう
人ほど、懐かしいということでしょうか。