堀内誠一さんの本

 先日に書店で新刊棚をみておりましたら「父の時代 私の時代」という
堀内誠一さんの本が目にはいりました。「わがエディトリアルデザイン史」と
副題のついた、この本が復刊するのは何年ぶりのことでしょうか。小生の
手元には、これの元版がありますが、これは79年11月に「エディター
スクール出版部」からでたものでしたから27年ほどたっています。
 エディタースクール出版部というと伊達得夫さんの「詩人たち」が
収録された「エディター叢書」をだしているところですが、このシリーズは
とっても装幀が地味なのでした。
ところが、堀内さんのこの本は、書籍のアートディレクションをしていた人の
ものだけあって、表紙カバーには、彼がてがけた「血と薔薇」(天声出版」や
福音館書店の絵本、そして平凡出版(当時)の「アンアン」「「ポパイ」の
写真がのっています。これが実にカラフルで、これがほんとにエディター出版の
ものかと思ったものです。
 堀内さんの本が、ここからでたのは、これが月刊「エディター」誌に連載
された早すぎる自叙伝「ホーキ星通信」がベースになっているからだそうです。
この本から、当方に興味のあるあたりというと、次のくだりですかな。

「 内藤三津子氏はその後PR誌ドリアンなどを作っていましたが、話の特集
創刊を手伝い、同社を辞した後、天声出版に移り、渋澤龍彦を責任編集者と
する血と薔薇を創刊、私も呼ばれてADを担当しました。・・・・
血と薔薇はプレイボーイやペントハウスのような男性向け娯楽誌やポルノ
マガジンとも違って、妙に真面目な正攻法だったと思うのですが、安保後の
学生運動や、赤軍派事件に続く時代の、いわゆる政治と性といったアクチュアルな
構造論とは別の永遠のダンディズムに従ったといえるでしょう。それは渋澤氏の
意志でしたし、私も共有した幼児性の発露にすぎないようです。」

 ここにでてくる「血と薔薇」は、しばらく入手困難でありましたが、
スタイルはことなるものの、現在は「河出文庫」におさまっておりまして、
容易に手にすることができるようになりました。むかしの雑誌と雰囲気は
ことなるものの、テキストは読むことができるようになりました。
( 河出文庫の最近の最大のヒットは、このシリーズでありましょう。)

 今回、「父の時代 私の時代」を刊行したのは平凡出版あらため
「マガジンハウス」であります。「ポパイ」はすでに廃刊となっていますが、
「アンアン」は現在も健在でありますでしょう。65年に創刊された雑誌が
現在にも受け入れられているのは、最初のアートディレクションがよかった
ことにもよるでしょう。
そうしたことから、今回、この本が「マガジンハウス」から復刊されたのは、
いたって自然なことです。