カタカナでバラと表記しますと、現実の植物のことをいうようであります。
これは、いま庭で咲いている花となります。
これが漢字で「薔薇」と表記した瞬間に、今咲いているバラではなく、この世の
植物とは思えなくなります。これはそう思わせない力が働くからでありましょう。
蓮ときくとあの世を連想するがごとしです。
そうした著作の代表としては、中井英夫さんの「薔薇幻視」があります。

- 作者: 中井英夫
- 出版社/メーカー: 平凡社
- 発売日: 1975
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (1件) を見る
この「薔薇幻視」の前書きには、次のようにありです。
「地上の薔薇はいかにも美しいが、世の薔薇作り薔薇愛好家がもっぱらその外側に
だけ心を奪われて、内部の、もうひとつの薔薇の美を探ろうとしないのが私には
不満であった。かって桜の樹の下には屍体が埋まっていたように、薔薇の内部には
なおいっそう神秘な何ものかが、ひそんでいはしないか。『薔薇幻視』は、いわば
新しい旅への誘いである。」
拙ブログで「薔薇」という文字を検索してみましたところ、次のようなところで
でていました。

- 作者: 加藤周一
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1973/01
- メディア: ペーパーバック
- 購入: 1人 クリック: 1回
- この商品を含むブログを見る

- 作者: 加藤周一
- 出版社/メーカー: 湯川書房
- 発売日: 1976/12
- メディア: ?
- この商品を含むブログ (1件) を見る

- 作者: ウンベルトエーコ,河島英昭
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 1990/02/18
- メディア: 単行本
- 購入: 11人 クリック: 197回
- この商品を含むブログ (191件) を見る

- 作者: 澁澤龍彦
- 出版社/メーカー: 河出書房新社
- 発売日: 2005/10/05
- メディア: 文庫
- 購入: 3人 クリック: 17回
- この商品を含むブログ (26件) を見る
いました。
どれもバラの内部の「神秘な何ものか」に着目をしたもののように思えます。
この場合のバラというのは、花びらが一重ではなく、内部が見えないもののよう
です。
