神を見た犬 ブッツァーティ

 本日の朝刊をみましたら光文社文庫の広告が目に入りました。古典新訳文庫の
ほうでありますが、ここにブッツァーティ「神を見た犬」がでておりました。
どちらにしてもブッツァーティの作品が文庫で入手できるようになったというのは、
たいへんめでたいことです。
翻訳された人のことは知らないのでありますが、とにかくブッツァーティとあらば、
取り上げておこうと思った次第であります。
 イタリアの作家ではイタロ・カルヴィーノのものは、いまでも入手できる作品は
多くあるようですが、もともとそんなに作品が翻訳されていないブッツァーティ
ものは、容易に入手できるものがないように思います。(本当はあるのかもしれま
せんが。)
 ブッツァーティのものでは「タタール人の砂漠」と「七人の使者」が有名です。
前者は、ずっと昔の「集英社 世界の文学」に入っていますが、あれの編集委員
篠田一士さんでありました。この作品は、単行本になることもなしでありますが、
ほとんどなにもおこらないような不思議な味わいの作品でした。
(ネットでみたら、いまでも安くでまわっていました。)

「七人の使者」は河出書房のモダンクラシックというシリーズの一冊ででており
ました。モダンクラシックというのは、河出が積極的に翻訳小説に取り組んでいた
時代のシリーズもので、同じ装幀でずらっとならんでいたのでした。
小生は、このシリーズのものを何冊かしたもっていないのですが、そのなかに
「七人の使者」がありました。いつからか、このモダンクラシックは、古本やさんの
店頭で見かけることがなくなっています。昔はあれほどあったのに。
あの本とか、この本を購入しておくべきだったと、いまになってくやんでいます。
(購入を逃したなかで一番の値段をつけているものは、ヴァレリーラルボー
「A・O・ヴァルナブーズ全集」でしょう。いまから20年くらい前に東京の三軒茶屋
あたりの古本やでは2800円くらいであったのに、いまでは10倍に近くなっては
いなかったでしょうか。)
 今回のブッツァーティの短編集は、どのような作品をあつめているのかわかりませんが、
内容がちらっとみえたなかには、「七階」なんて作品もおさめられているようです。
今回のタイトルになっている「神を見た犬」は、「七人の使者」のなかにある作品との
ことですが、これはまったく記憶に残っておりません。
 こうした翻訳の新シリーズを手にするにつけても「河出モダンクラシック」の復刊を
望むのでありました。