本日も絶版文庫を

 本日も、あれこれの合間に「絶版文庫万華鏡」を手にしておりました。これに

ついては取り上げられていないのかなと思ったりですが、この絶版文庫シリーズ

はすでに何冊もでていますので、すでに言及されているのかもしれません。

 当方が文庫本を購入するようになりましたのは、1960年代中頃からであり

ますので、これ以降に文庫本を出していた版元については、ほぼ名前を知ってい

るようですが、知らない文庫版元が多いのは、意外にも2000年以降でありま

して、それは限定出版のものでありますから、知らなくても不思議ではないか。

当方の守備範囲ではないイタリアSF文庫とか、英国ゴシック文庫などは存在する

ことすら知りませんでした。

 まるまる姿を消してしまった文庫はたぶんいくつもあるでしょうが、そんな

なかで今も気になっているのは、福武文庫と旺文社文庫でありますね。

どちらも学参というか受験産業でありまして、その儲けを文芸出版に注いでいた

ことになります。

 旺文社文庫は、高校生を意識して注が充実していたのですが、この文庫で一番

の好みは山川方夫さんの「安南の王子」でありまして、山川さんの文庫本では

「親しい友人たち」に続いてのものでした。1973年12月刊行ですから、

この文庫はインパクトがありましたです。

 福武文庫は、そんなに熱心にフォローしてはいないのですが、この文庫には

福武系の作家さんが多く干刈あがたさんの作品を、これで読みましたです。

あとは庄野潤三さんの「ザボンの花」もですね。

 講談社文芸文庫は本当にありがたいシリーズでありますが、作品だけを読むの

であれば、いまでも福武文庫版「ザボンの花」は中古市場で安価で入手が可能

であるようで、解説とか年譜にこだわらないのであれば、文芸文庫よりも元版

とか過去にでた文庫のほうが懐にやさしいというのが、残念というかありがた

い話でありまして、このように安価で入手できるようになったのはネットのお

かげでありまして、これは数十年前とはまったく違う点であります。

 「絶版文庫万華鏡」を読んで一冊くらい買いましょうと思ったのですが、そ

う思ったのは、近藤さんが次のように書いているものです。2014年に小学館

文庫ででたものとか。

「これほど面白い小説はそうそうないにもかかわらず、早くも絶版とは残念で

ならない。安く買えるうちにぜひ古書ででも購入されることをお勧めしたい

一冊である。」

 作品が面白く、小笠原豊樹さんの翻訳がいいと絶賛でありまして、書影を

みましたら、装丁は平野甲賀さん、これは買わなくては。