井上ひさし「紙屋町さくらホテル」

 先日に井上ひさしさんの「紙屋町さくらホテル」の芝居上演が
ありまして、この作品を見物してきました。
この作品は、新国立劇場開場記念として97年10月に中劇場の
ために書かれたものですが、10年目にして何回目かの再演となり
ます。
 この初演のときに、小生の兄が出張で東京にいっており、たま
たま中劇場に足をはこんでトイレにいったらとなりに井上ひさし
さんが用を足していて、兄は声をかけてもっていたチケットの半券に
井上さんのサインをもらい、東京からの土産として小生にプレゼントを
してくれました。
小生は、もともと井上さんのファンでありますからして、なんとか
して「紙屋町さくらホテル」は舞台を見なくてはと、そのときから
思っておりました。その初演は、さすがに国立劇場でのものだけ
あって、森光子、大滝秀治、そしてこまつ座専属の辻萬長が登場と
中身もとってもこそでした。
 せっかくの楽しみでありますが、好事魔多しです。ちょうど出張が
入りまして、芝居をやっている会場に入ることができたのは、上演が
はじまって1時間もたっていたのです。
 井上作品は、とにかくせりふが多くて、長いので、すこしくらい
おくれましても、あまり違和感がありませんです。

 井上さんの別れた奥さんにいわせると、井上さんは芝居を舞台に
かけたくて、小説をしこしこと書いて、資金をためているとのこと
です。そういえば、最近は、芝居は矢継ぎ早に発表されますが、
ほとんど小説を目にすることはなくなっています。
 特に、前のおくさんと別れてからは、作品から毒がなくなったという
ひとがいます。好子さんという奥さんは、ほとんど悪妻の見本の
ようなひとでありまして、そのおかげで、芝居のなかで描かれる
悪人が引き立つといわれてました。
 先日の作品をみてもですが、ほとんど悪人がでてこなくて、これが
物足りないことです。そのむかしは、必ず、悪の化身のような登場人物が
いて、それが作品に深みを与えていたのに。
 こうして考えると、井上ひさしさんが、前の奥さんと別れて、上原万里
さんの妹(そのむかしの代議士の娘か)と一緒になったということは、
創作ということではプラスになっているのでしょうか。
家庭的には幸せそうでありますが、家庭的に恵まれるといい作品が
かけなくなると、よく言われるところです。