芸能本のもう一冊  

 読みやすくて楽しいので、読み終えるまで毎日でも「東京漫才全史」から

話題をいただいてもいいのでありますが、ちょっと煮詰まりますので、図書館か

ら借りているもう一冊の芸能本を話題にしましょう。

 芸能本とはいうものの、芸能を話題にしてはいるのですが、こちらはガチの

研究がベースでありますので、「読みやすくて楽しい」はどうでありましょう。

テーマは放浪芸と、それの収集家であった小沢昭一さんでありますが。

 「日本の放浪芸」のレコードが発売されたのは、1971年とありますので、当方は

まだ学生でありました。当時は玄人筋には評価が高くて、レコード大賞の部門賞を

受けたのですが、この頃までは辛うじて放浪芸の方々がいたのですね。

 先日に放送がありましたNHK「新日本風土記」を見ていましたら、秋田の飲み屋

街である川反で、名物のような存在であった「中島のてっちゃ」が取り上げられてい

ました。この「中島のてっちゃ」という名前が、秋田外の人にも知られているのは、

無明舎出版安倍甲さんのおかげでありますが、エリアは限定ですが、彼なども

放浪芸人の一人でしょうか。(ほとんど乞食芸人のごとくですが)

 「日本の放浪芸」を書いた鈴木聖子さんのあとがきを見ましたら、小沢昭一さん

が録音をして「放浪芸」におさめた演者のなかの最年少は、当時30代半ばで、

いまは80代後半で健在であって、その方にお話を聞くために訪ねたとありました。

「現在は八十五歳、ご自坊である石川県輪島市門前町の満覚寺はすでにご子息に

任せられているが、今もなじみのお寺にはお説教にでられている。

2022年11月1日、本書をほぼ書き終えた日の午後、それまで敷居が高くてため

らっていた廣陵師へお電話をした。」

 お寺での節談説教でありますので、放浪芸というのとはちょっと違うのではあり

ますが、この本で初めて名前を知った時には、たぶん、自坊の状況は激変している

のではないかと思うのでありますが、輪島の満覚寺はどうなっているのでしょう。