団菊じじいといえば、明治の歌舞伎の世界での大看板である九代目團十郎
と五代目菊五郎の舞台を見ていて、あの二人の芝居は最高であったな、それと
較べると最近のはと口にだした人のこと、またはそのような振る舞いを指すよう
であります。
昔は良かったなと言っているわけではないのですが、昔に目にした舞台・高
座の話などを読むにつけ、こういうのを同時代に実演で見たかったなと思うこと
であります。
そう思ったのは、図書館から借りている矢野誠一さんの「芝居のある風景」を
読んでいるからであります。80代後半で、十代の頃から劇場などに足を運んで
いる矢野さんは、ほんと無形文化財でありますよ。
矢野さんは、ほんと数多くの著作があるのですが、それについて、次のように
書いています。
「いきなり私事で恐縮だが、半世紀をこす文筆渡世で、いちばん数多くの読者を
得た拙著は、お笑い藝界に君臨している吉本興行の創設者を書いた『女興行師
吉本せい 浪花演藝史譚』で、中央公論社の四六版、中公文庫、ちくま文庫と、
三度のおつとめをしている。
初版は1987年9月刊行だが、取材のほうはその十数年前から始めていた。
その時分はまだ吉本せいを直接知っているひとがかなり健在で、その方たちか
らはなしを伺うべく、じつにしばしば大阪の地をたずねた。」
現在放送中の朝ドラに、この吉本せいさんをモデルにした人物が登場するの
ですが、彼女を仕切っていた時代は、まだまだ昔の気質が残っていて、やばい
世界でありました。
当方の古くからの京都の友人は、最近の朝ドラの大阪発のものについて、次の
ようにメールをくれました。(彼はメールも、話すように京言葉です。)
「 『ブギウギ』は観いひんことにしてるんやわ。今回は関西弁のニュアンスが肝の
はずやろうに(♪「わてほんまによう言わんわ」♪が耳についてる)、
NHKときたら以前からずっと聞いてられへんほどひどうて、まるで関西を小馬鹿に
してるみたいに聞えてしまうさかい。」
彼は見ていないのでしょうから、村山興行の女主人役の感想などを聞くことも
できずです。
彼にちょっと見てもらいたいのは、このドラマで村山興行の東京支店長役(?)を
演じている黒田さんという方でありまして、彼の言葉はどうだろうかと聞いてみた
いものです。
黒田さんを見ていたら、大阪発の人気ドラマがたくさんあった時代の役者さんの
ことを思いだしました。たとえば高田次郎さんですね。
黒田さんには、へんに東京にでて売れっ子になることなく、渋い大阪の芸人になって
もらいたいものです。