本日は重陽の節句でありまして、夕方くらいになって、このことを思い出しま
した。この日には、丸谷才一さんの「今は何時ですか?」を話題にするのであり
ましたが、あれほどであった丸谷才一さんも、最近は読まれなくなっているので
はないでしょうかね。
2012年10月に亡くなったので、ことしで没後10年でありますか。今こそ忖度な
しに丸谷作品が論じられるようになってほしいものであります。それにしても、
あれほどの威光でありました丸谷さんの仕事をまとめたものが、文藝春秋社から
の全集の全12巻というのは、ほんとさびしいことです。
このほかに批評をまとめたものがあるではないかとか、書評はちくま文庫で
すこしまとまっているではないかとかいわれるのですが、もうすこし全体を見渡せ
るような編集方針で、全集を作る事はできなかったのかな。亡くなった時代は、
出版業界に逆風でありましたから、丸谷さんはそれをまともに受けてしまった
格好ですね。
その昔は日本文学全集のようなものがありまして、主要な作家は、それの一巻
に代表的な作品が網羅されて、良質のアンソロジーとなっていました。最近でいう
と池澤夏樹さんが編集した河出の全集がありますが、当方の頭にはその昔に筑摩書
房が出していた全集のイメージがありです。
池澤さんの全集では、丸谷さんの中編「樹影譚」と「横しぐれ」をとっています
が、やはり長編とか批評、それに書評と雑文までも含んだ一冊本ですよね。
その昔に、野呂邦暢さんの作品がなかなか入手が難しかったときに、文藝春秋社
が一冊本の「野呂邦暢作品集」というのを出してくれたことがありますが、その後
に野呂邦暢さんについては、小説集成とエッセイ集成がでて、非常に恵まれたこと
になりました。
丸谷さんも一冊本の作品集からでも新たなファンを獲得するようにしてはいかが
でありましょう。
その時に長編小説は何をとりましょうか、とるとすれば「笹まくら」ですが、
思い切って丸谷は中編までということもありかもなとか、評論、批評なら何をとる
かなとか、あれこれ考えるのも楽しいことであります。