たまには古本屋へと行きたい

 このところまるで古本屋へと行っていないなと、岡崎武志さんの「古本大全」を

読みながら思うことです。

 今はかろうじてブックオフがある、この街にも昔は古本屋がありましたですね。

当方が就職のために、この街に越してきた半生記ほど前には、いかにもわけあり

そうな親父がやっている古本屋があって、そこには何度か足を運びました。

 ほとんどやる気がないような店で、食い詰めて自分の本を売っていたり、すこし

持ち込まれた本を買い取って販売していたような、小さくて暗くて入りにくい店で

ありました。

 あとになってそこの店主は、若い頃は労働運動をやっていて、早々に会社をやめ

てからは小説などを書いていた方と知りました。残念ながら当方はその小説を読ん

だことはないのですが、文芸同人誌に参加していたとのことです。

 当方は、同人誌の世界には近づくことがありませんでしたので、その店主とは、

本を買う時にしか接することはなしでした。あの店は、どのような終わり方をしたの

かな。もともとやっているのかいないのかわからないような店でしたので、気がつ

いたらいつも閉まっているとなったのでしょう。

 この店では、何冊か本を買ったはずですが、たしか集英社「世界の文学」の一冊

を買ったはずであります。篠田一士さんが企画に参加していた画期的な全集であ

りました。

 この全集の刊行は1976年から79年でありまして、ラテンアメリカの小説がこんな

に収録された全集は、これが最初でした。

 当方が偏愛する「酔いどれ草の仲買人」は、このシリーズにしか入っていないので

はないでしょうかね。マルケスの「百年の孤独」が文庫に入るとのことがニュースに

なりましたが、J・バースの「酔いどれ草の仲買人」も、文庫とはいいませんが、もっと

読みやすい形で再刊されてもいいのにね。