本日も「本の雑誌」から

 「本の雑誌」1月号は、特大号となっていまして「前年度ベスト10」というのが

掲載されることもあって、たぶんいつもの月よりも、ずっと売れるのだと思うのです

よ。付録はなくても1月号は、やはり特別でありますね。(当方が子どもであった60年

も前のことですが、当時の少年誌を買ってもらえるのは正月号だけでありまして、

それはほんと豪華付録で楽しみにして、大事にしたものであります。最近の雑誌の

付録事情はどうなっているのでしょうね。)

 いつもの月よりも1月号というのは寄稿する側も力が入ったりするのかな。本日も

掲載されているベスト3ものを話題にしようかなと思いましたが、連載ものからいた

だくことにです。

 川口則弘さんが、「文芸記者列伝」というのを、もう2年ほども連載しているので

すが、以前は当方も名前くらいしか知らなかった人が続いていましたが、ここにきて、

この人は知っているぞという記者さんが取り上げられることにです。

 今回の書き出しは、このようになっています。

「喫茶店には名物マスターがいる。老舗の旅館には名物女将がいる。同じく文芸界

には名物記者がいる。・・・1990年代から数十年、いわゆる平成の時代を通じて

『名物記者』の称号が最も似合うのはこの人をおいて他にはいない。『読売新聞』

鵜飼哲夫である。」

 名物が名物である所以は、「要するに面の皮が厚い」からなのだそうです。

「いろんなところに顔を出し、ペラペラとしゃべっては少し変わった発言をして場を

沸かす。ときに笑われたり馬鹿にされたりするが、本人はまるで気にするそぶりも

ない。」

 川口さんは、このように書いているのですが、相当に評価が分かれる記者さん

なのでありましょう。

 当方は、読売新聞は購読していないこともありまして、鵜飼さんのことをはっきり

と認識したのは、芥川賞候補作品をまとめたアンソロジーの編者としてでありまし

た。

 本日に、「本の雑誌」を見て川口さんの鵜飼さんについての文章に反応したのは、

図書館から借りてきた本にも鵜飼さんが登場したからであります。

 それは豊崎由美さんの「時評書評」で「遠野遥」さんが芥川賞をうけたときの記者

インタビューを紹介しているからでありました。

「(遠野遥は)これまでの純文学界では異質。でもって、新聞の文芸記者に対する受け

答えがニュータイプ。」とありまして、記者さんの質問に答える様子がでてくるのでし

た。

「鵜飼 どうも、読売新聞の鵜飼といいます。先ほど写真撮影のときに文藝春秋

代表カメラマンが、ちょっと笑顔でというPRがあったんですけども、終始一貫、白い

歯がこぼれなかったんですけども。

遠野 いや、私としては笑顔のつもりでやってたんですけど、そうは見えなかったで

すかね。それは残念ですけど。

鵜飼 そうでしたか。今日、吉田修一選考委員が、主人公というのが、ある種、

一方で、社会のマナーに対して神経を使いながら、一方で行動というのが一致して

いないところがおもしろいってあったんですけど、白い歯をみせないとか笑顔を

しないっていうのが、独特の、作者によるマナーなのかなとも思ったりしたんです

が。」

 豊崎さんは、遠野さんの受け答えを話題にしているのですが、当方は鵜飼さん

のすこし変わった発言に注目でありますので、このような引用にです。

それにしても、このような鵜飼さんのスタイルは、どのようにして生まれたのか、

興味のあるところです。