年内あと何冊読めるか

 このところ手にしているのは岩波文庫「俺の自叙伝」と絲山秋子さんの「神と

黒蟹県」、そして「ジャズで踊って」などであります。

 「俺の自叙伝」は残りが100ページを切りましたので、集中して読むことができ

たら、本日中にでも最後のページにたどりつきそうです。大泉黒石さんの小説で

ありますが、家賃を払わずに夜逃げをするくだりなどを読んでいますと、西村貫太

さんのごとくです。もちろん、西村さんが大正時代の文士をなぞっているわけで

ありますが、このように書かれています。(この逸話は、作者の友人のものです。)

 「家賃も米代も払わずにいたらしい。もっとも家賃は一度払うと癖になって

翌月また取りに来るから、一層のこと最初から払わずにいたのかもしれない。」

 この方によると、家賃を払ってもらえると思わせるのが悪いということになるの

でしょう。とんだ店子でありまして、大家は苦労するのでありますね。

 こんな調子ですが、最後に置かれているのは「文士開業時代」でありますが、

ここでは、次のようになりです。

「俺の親類といいうのはこの呑んだくれの音吉と、音吉とは兄弟の血を分けた

大阪の封助の二人っきりだ。話を聞いてみると、世間の文学者は揃いも揃って

上品な紳士と淑女ばかりを持っているそうだが、俺の方は音吉と封吉だ。」

 もともとは大泉黒石さんは、ロシアの外交官と長崎の女性との間に生まれて、

父方は由緒正しいのですが、ロシア革命で運命は一転するのですが、それでも

子どもの頃には、恵まれた生活を送っていたのですよね。

親類がこの二人っきりというのは、もちろん受けを狙ってのことです。

 あと一冊最後のページにたどりつきそうなのは、絲山秋子さんの小説ですが、

こちらはちびちびと読みまして、読み終わったらまた頭から再読することになるの

ですね。絲山さんの本は、登場する人物に生活感があって、足が地についていると

いう雰囲気で安心して読むことができるのですよ。

 「ジャズで踊って」はまだまだ先が長いのですが、先日に届いた新潮「波」に

掲載の筒井康隆さんの文章に、登場していました。

「この日、瀬川さんの『ジャズで踊って』を読了。凄い本だとしか言いようがない。

明治時代から説き起こされたりするのだが、次第に知っている人名が増えてくる

などこたえられない。・・・

 瀬川さんとおれの関係についてはこの本末尾の『編者あとがき』にくわしい。

読み終えるのがつらくいつまでも読んでいたいと思わせてくれた本であった。」

 おお、このように書かれているのを読んだら、これは年内に読まなくてはと思う

ことであります。