建築見物に行きたくなること

 図書館から藤森照信さんの「現代建築考」を借りてきましたです。

 モダニズム建築の代表的なものを藤森さんが訪ねて、建築の解説加えています。

日本全国に散らばっている45の建築物が取り上げられているのですが、北海道

にはないというのが残念であります。

 この本の表紙を飾って、最後に置かれているのは藤森さんが関わって2014年に

完成した近江八幡市たねやコリーナでありまして、藤森さんはヴォリーズに

始まるモダニズムの流れのバトンを受け継ぐものとしてラコリーナをプランニング

したということがわかります。(ヴォリーズは近江八幡が本拠地でありましたか

らね。)

 数年前に近江八幡の駅で、一度下車をしたのですが、ひどい雨の日でありまして、

ヴォリーズの建物もたねやへも行くことが出来ずでありました。なんとかそのうち

機会を作らなくてはいけないことです。

 名建築といえば、このところBSTVで再放送をやっている「まんぷく」という

ドラマは、この時期は主人公がホテル勤務でありまして、これがどこから見ても

ライト様式でありまして関西でありますので、ロケは旧甲子園ホテルであります

ね。現在は武庫川女子大学甲子園会館となっていますが、TV画面では実に趣を

感じることです。

 この旧甲子園ホテルはライトに師事した遠藤新によるものでありますが、藤森

さんの本には、この建物は入っていません。

 ライトの建築物ではヨドコウ迎賓館が紹介されているのですが、この建物につ

いて、藤森さんは次のように書いています。

「この建物の存在が学会に報告されたのは50年近く前の私が大学院生時代のこと

で、その時、一番のテーマは、設計者がライトか弟子の遠藤新か、というここと

だった。」

 この設計者は誰かという議論については、「ライトが設計をし、ライト離日後は

遠藤が施工を監理して完成させたことが明らかになり、今では、自由学園同様、

ライト設計+遠藤監理、で落ち着いている。」とのことであります。

 かくして、日本国内にはライト設計となる建築物が、北米以外で残っている例外

的な国となっているのだそうです。

 それでは旧甲子園ホテルの遠藤新さんについてですが、藤森さんはかなり厳しい

ことです。

「作品の室は、ライトと遠藤では差があり、見ればすぐ分かる。遠藤の作は伸びや

かさに劣るところがあるというか、創造したものとそれに学んだ者の違いといえば

いいか、鮮烈さが違うのだ。ライトの引いた線は走っている。スピード感がある。」

 ほとんど美術の世界で、線が生きているなんていうのと同じ世界の話であります

ね。