返却期限が明日に迫っている図書館本を、あわてて手にすることにです。
かけこみ乗車ならぬかけこみ読書(どくしょとはいえないか)でありますね。
明日期限のものは4冊でありまして、ほとんど読めていないものばかりですが、
パラパラと最後までページをめくることができたものは、借り直しはせずに
返却してしまうことにしましょう。
ということで、パラパラとページをめくっていたのは、菊地信義さんの次の
本でありました。
当方は菊地さんの装幀本とはあまり相性がよろしくなくて、古井由吉さん、
中上健次さんなどほとんど読むことができておりません。いくつかは持っては
いるのですけどね。
さすがに講談社文芸文庫とか福武文庫のものなどは持っているのでありますが、
本文を読み込んで、それを独特の仕方でデザインに変換するというところについ
ていけてないようであります。
この本に収録されている「古井由吉さんとの対話」を読んでみると、いかにも
純文学というか重たい文学の装幀家であるということがわかってきます。
菊地さんには重たくない文学作品の装幀もあるのですが、代表的なものといえ
ば重たいものが頭に浮かんできます。
他の装幀者に言及している文章もありまして、これは初出が週刊文春である
せいか、とっても読みやすくてありがたい。
ここで取り上げられているのは、和田誠、杉浦康平、平野甲賀、田村義也さん
などですが、このなかでは田村義也さんの装幀法について説明しているところ
が参考になりましたです。
「『火山島』は『僕の昭和史』以前における、田村義也さんの装幀の最高傑作
だと思うんですよ。”火山島”をイメージしたあるビジョンをイラスト化する。
その意味ではイラストによる”説明”にちがいないですが、田村さんにはもうひと
つ書き文字という重要な項目(アイテム)があります。書物の内容や雰囲気を
書き文字によって表現するわけです。
印刷の方式も重要です。印刷方式がもたらす効果が、本の視覚性、触覚性を
規定しますから。・・田村さんのほうは一貫して活版印刷。」
田村義也さんの時代でも活版でカバーを作るとえらくコスト高になるといわれ
ていましたものね。