やはりこれでしょう

 本日の新聞にデザイナーの菊地信義さんの訃報が掲載されていました。

3月28日に心不全でお亡くなりなったとのことで、まだ78歳ですから、

残念なことです。

 それにしても、ここ何年かで装丁を手掛けていたデザイナーさんたちの

大物が、次々と鬼籍に入ることで、時代の変わり目を感じてしまうことです。

和田誠平野甲賀安野光雅、坂川栄治、桂川潤 などであります。

 いずれのデザイナーさんたちも、当方のところにはどっさりと手掛けた本

があって、装幀作品集なども架蔵していたりです。

 こうしたラインナップに新たに菊地信義さんが加わることになりです。

菊地さんは、作品をよく読み込んだ上で装丁を手掛けるタイプでありまして、

一番頭に浮かんでくるのは、古井由吉さんの一連の作品でありましょう。

あとは、福武書店からでていた文芸関係のもので、文芸誌「海燕」というの

は表紙は、いつも菊地さんであったのではないでしょうか。

 どういうわけか、菊地さんが手掛ける作家さん(その昔であれば「海燕

によっていた人たち)と、当方の相性があまりよろしくなかったことも

あって、一番菊地さんが活躍していた時代には、あまり手にすることが

なかったように思います。

 何冊か持っている菊地信義さん関係の本で、すぐに取り出すことができた

のは、次のものでありました。

 本日に目にした訃報記事の見出しには「サラダ記念日」という本があがって

いましたが、菊地さんは売れる本を担当することはほとんどなかったと思います

ので、担当したものでは一番有名なのは、「サラダ記念日」でありますが、あの

本の書影を見て、これは菊地さんのデザインとわかるでしょうかね。

 やはりここでは古井由吉さんのものをあげておきましょう。

 読むことはできないと思えるのに、思わず手にして、買ってしまいそうな

インパクトが福武書店版の「槿」にはありますよね。(当方はさすがに元版

は買うことはなっかったのですが、これが福武文庫に入ったときには、買っ

てしまいましたです。)

 そしてそして、福武書店亡きあと(ベネッセは違う会社にしか思えない

ことで)に、菊地信義さんの仕事が長く続いているのは、講談社文芸文庫

ありまして、これの基本的なフォーマットは菊地信義さんがお作りになった

ものでありまして、それが今も健在です。

文庫の表紙フォーマットというのは、どの文庫にとっても相当に考えられて

いるものですから、そういうことからは、菊地信義さんの代表的な仕事と

いってもいいでしょう。

 決して派手なものではありませんが、講談社文芸文庫といえば鯨の尾が

マークでありまして、菊地信義さんデザインなのであります。

 当方ひいきの小沢信男さんの著作にも菊地さんのものがあって、これは

意外感がありました。(「あの人とあるく東京」です。)