落選小説集があってもいいか

 文学賞というのは、その時々の候補作の中から選ばれるのでありまして、必ず

しも受賞作が、一番当方の好みに合うとは限りませんし、その前後の受賞作より

も優れた作品が運悪く落選ということも多々ありそうです。

 笙野頼子さんには「三冠小説集」というのがありますが、それで行きますと、

「落選小説集」というのがあってもよろしいことです。

 当方が思い描くのは、一人の作家さんで受賞にならなかった候補作のみを集めて

一冊とすることです。

 その昔でありましたら、その時に名前がでてくるのは佐藤泰志さんとか、島田

雅彦さん、佐伯一麦さんのようにひんぱんに候補となったのに、芥川賞を受賞する

ことなく大家になった(若くして亡くなった佐藤さんを除く)お二人などは、そう

した小説集をだすにうってつけでありましょう。

 そうはなってほしくはないのですが、若手の作家で、このところ芥川賞候補の

常連といえば乗代雄介さんでありまして、2022年を除いては、ここのところ毎回

のように候補に残っています。 

 なかには、豊崎社長が一押しの候補作もあって、これまでで受賞していないの

が不思議なくらいです。

 後になって選考委員さんたちは、あの作品の時に渡しておけばよかったのにと

思っても遅いのでありますね。

 ということで、豊崎社長一押しの作品を図書館から借りてきて読んでみること

にです。