そういえば文庫本も

 先日のブックオフで購入した文庫本のことであります。いつもは均一本しか買わ

ないのでありますが、たまたま図書館から借りている比較的新しい本の文庫が見つ

かったものですから、この文庫を買えば図書館から借りているものを返してもいいか

なと思ったことです。

 憎まれっ子の西村賢太さんは、小説を単行本で刊行したら、ところてんのように

三年もしないうちに文庫化されて、それっきり重版もされずに品切れになっていく

とどこかで書いていましたが、どこにあったのだっけと講談社文庫をてにしてみるも

見当たらず。これは他の文庫か、と思って「一私小説書きの弁」を開いてみました

ら、「積年の思い溢るる」という文章があり、そこにあるのでした。

 西村さんが、処女創作集が、発行丸三年をして講談社文庫に収録されたのを喜

ぶ趣旨の文章になります。そこで、言わんでもいいひとことを発します。

「無論、同社文庫も今では創刊当初のような性格は失せ、単なる売れ線のものを

毎月二十点程量産し、自社刊行の単行書であれば大抵いったんは文庫の方にも

おさめる、ごく当たり前の叢書となっている。つまり”余程のことがない限り”当今の

文庫化というのは殆ど自動的になされる事象に過ぎぬということであるが、・・」

 この前にははじめて文庫化されるので、うれしいとありますから、まあ、こちらは

照れ隠しということもあるのかもです。

 ということで、先日にブックオフで購入したのは、小説家にとってデビュー作で

ありまして、初めて文庫となったものでありました。西村さんは、3年もすれば文庫

になると記していますが、この作品は文庫となるのに6年半もかかっていました。

 先日に購入したのは乗代雄介さんの「十七八より」講談社文庫でありました。

 先日の鮭児文学賞に続いて、織田作之助文学賞も受けてしまった乗代雄介

さんでありましたが、デビューの頃は苦戦していたのですよね。最近は発表する

作品がほぼ芥川賞候補にノミネートされ、評価もどんどん上がっているのですが、

デビュー作がその後文庫となったときには、素直に喜んだであろうと思うのであり

ますね。

 乗代さんの作品は、最近はコンスタントに文庫化されていますので、次に文庫と

なるのは「旅する練習」ですが、元版が2021年1月ですから、年が開けたら早々

くらいに文庫化されるのかな。これは楽しみに待つことにいたしましょう。