読んでいた本、買った本

 今回の鉄道旅行への携行本であります。本の形をしたものは二冊持参ですが、

一番手にして開いていたのは、この旅行のために購入した「北海道時刻表」8月

号でありました。

 この時刻表を見ている時に、青春18きっぷの旅とはいっても、普通列車ばか

りにこだわらず、一部区間では特急などを組み合わせたほうが、待ち時間を短縮

することにもなるとわかりました。時刻表は、ほんとに情報の宝庫であることです。

 これとは違う読む本として持参したのは、高杉一郎さんの「極光のかげに」で

した。これは先日に安価で購入した岩波文庫でありますが、高杉さんのファンで

ある当方は、新潮文庫版を確保し、冨山房百科文庫で読んで、岩波文庫も新刊で

買っていました。

 何年ぶりかでこれを再読するのですが、ロシアが隣国へと攻め入っている今

こそ読まれるべきであるのかも知れません。それだけ、この作品の射程距離は

長いといえるでしょう。

 この本が刊行された70数年前には、これはソビエト連邦スターリンを貶め

るものと批判を受けたのでありますが、もちろんそれを目的にしたものではなく、

人間の社会の哀しさ、おかしさというのは世の東西を問わずということが書かれ

ているように思います。

 ロシアは、まったくダメな国だなと思う人たちは、それじゃ日本国はというこ

とに思いがいたるものです。函館往復の時に、かなり読み進んだのですが、あと

すこしだけ残っています。明日には、最後までたどりつけるかな。

 函館で新刊を販売している本屋といえば、長いこと駅前にある老舗でありま

したが、これが店を閉めまして、旧市街にはほとんど本屋がないことになった

ようです。駅前から一番近い本屋は、市電にのってちょっといったところに

ある百貨店のテナントで入っているジュンク堂系の店でありました。ジュンク

堂といえば、大きな本屋さんをイメージしますが、この店はこじんまりとして

いて、本を探すのにも疲れることはありません。

 岩波文庫もあって、これの新刊の一冊をありがたく購入です。

 これまでも、後藤明生さんの関係でとか、中村とうようさんの文章を紹介する

なかで説教節について言及してきましたが、やっとこさで岩波文庫で入手できる

ようになりです。

 中村とうようさんは、「ニッポンに歌が流れる」という本に収録の文章で、次の

ように書いています。

「説教節のように古い歴史を持ち、かつ底辺の大衆によって担われ、支持されて

きた語り物には、民族の遠い記憶、心の傷あと、深層心理といったものがさまざま

な形をとって表象されているはずだ。これまで、国文学者たちは、とかく『源氏

物語』や『枕草子』あるいは『古今』『新古今』といった貴族たちの純文学作品

ばかりに目を向けてきたように見える。しかしむしろ本当に研究し分析する必要

があるのは、名もなき民衆の共同制作とも言うべき説教節なのではないだろうか。」

 中村とうようさんが、このように書いたのは1983年のことで、上に続けて、

「近年になって説教節の研究が少しずつ盛んになってきている」と記しています。

 これから40年たって、岩波文庫に説教節の本が入ったことになります。

 本日の朝日新聞読書欄では、この本をとりあげて「本書は長年の研究成果と

語り物のフィールド調査を踏まえて、説教節をその本来の姿に近づけた画期的な

仕事である」と評しています。

 これは声にだして読みたい一冊でありますね。