一時間で読めるか

 本日に図書館から借りた本のあとがきを読んでいましたら、そこに「一時

間ぐらいでナナメ読みしてもらえるとスピード感もあって楽しんでもらえるん

しゃないかな。じっくり読まれると照れちゃうけど。」とありました。

 この本は、編集者を相手に語ったことをまとめてできたとありますので、そ

のせいもあって、スピード感を楽しんでとあるのでしょう。 

 この一時間くらいでナナメ読みというのを見ましたら、その昔に新潮社から

一時間文庫というのがでていたことを思い出しました。どこかにこの一時間文

庫があったはずと思ったら、珍しやすぐに取り出すことができました。

新潮社 一時間文庫 盲目の詩人エロシェンコ 高杉一郎

 新書版よりも一回り大きいサイズで、二段組 240ページほどですから、

一時間で読むのはとうてい無理なものです。ウクライナ生まれの詩人について

の伝記ですが、この内容には入らずで、1956年くらいには、これくらい

のボリュームを、一時間文庫として売り出しても違和感がなかったのであり

ましょうね。定価200円、地方定価210円というのも時代です。

 これから65年が経過して刊行された「一時間でナナメ読み」を、著者が

すすめる本は、次のものでありました。

 英語が堪能なDJである小林克也さんの音楽エッセイであります。現在もTVで

番組を持っているのですが、理屈っぽい音楽評論家という人ではなく、音楽を

紹介する人ということになるのでしょうか。

 前段は、どのようにして音楽の世界に入っていったかと話になり、後段では

番組で出会った外国からのミュージシャンのことなどが紹介されています。

 当方などは、小林克也さんの存在は、比較的古くから知っていたのですが、

あれをやっていたのが小林さんであったかと思ったのは、若い友人たちが

はまっていた「スネークマンショー」によってですので、ほとんど遅れてい

ることです。

 この本ではラジオ番組を始めた頃に感じた違和感のことが記されているの

ですが、このことが、逆に小林さんを当方から遠ざけていたのかなと思った

りです。

「元々、僕はラジオの仕事がすごくやりたかったんです。ところが、いざ

ラジオ番組をやってみたところ、現実とのギャップにガックリしてしまった

んです。

 自分の興味があることと、番組内で紹介する内容というのがまるで違うん

ですよ。」

 番組で紹介が求められているのは蘊蓄につながるような話であって、自分

が伝えたいのは、この音楽のどこがいいかということであったようです。

当方などは、どちらかというと頭でっかちな音楽ファンでありましたので、

蘊蓄を求めていたようです。

 そうなると、音楽評論家というような人がDJをしている番組をきくこと

になるのですよね。

 「洋楽の知識をふりかざすやつがいるじゃないですか。あれは僕が一番軽

蔑するタイプの人間なんですよ。」と語ってから、「好き嫌いの感情を一つ

の判断基準に」というのですが、それだけではプロのDJとしてはやってい

けないとありまして、10代から70年も音楽をきいていたら、そうであり

ましょうねと思うことです。